「海外で働きたい」「リモートで海外生活したい」——その第一歩となるのが、就労ビザとノマド制度(デジタルノマドビザ)です。
就労ビザとは? 現地で雇用されて働くためのビザ
就労ビザ(ワークビザ)は、外国人がある国で現地企業や団体に雇用されて働くために取得するビザです。
特徴
- 雇用主(会社)がビザのスポンサーとなる
- 給与や職種、学歴などに条件あり
- 国によって永住権につながるキャリアパスも存在
よくある就労ビザの条件(例)
- 現地企業からの正式な雇用契約
- 学士号以上の学歴
- 専門的スキルまたは一定以上の職務経験
- 最低年収ライン(国によって異なる)
各国の代表的な就労ビザ一覧
国名 | ビザ名 | 特徴・概要 |
---|---|---|
🇺🇸 アメリカ | H-1Bビザ | 専門職向け。年次発行数に上限あり。抽選制。 |
🇨🇦 カナダ | LMIAベースワークパーミット | 雇用主が労働市場への影響評価(LMIA)を取得。永住権にもつながる。 |
🇬🇧 イギリス | Skilled Worker Visa | 指定職種+スポンサー企業が必要。ポイント制で審査。 |
🇦🇺 オーストラリア | Temporary Skill Shortage(TSS)ビザ | 指定職種リストに基づき発行。滞在期間は最長4年。 |
🇳🇿 ニュージーランド | Accredited Employer Work Visa | 認定雇用主を通じて申請。年齢・給与・職種条件あり。 |
🇩🇪 ドイツ | EUブルーカード | 高度人材向け。年収要件あり。EU域内での移動が可能。 |
🇫🇷 フランス | Passeport Talent(タレントパスポート) | 高スキル人材・研究・起業など10カテゴリに分かれる。 |
🇮🇪 アイルランド | Critical Skills Employment Permit | 高度スキル職種に限定。永住権取得にも有利。 |
🇵🇹 ポルトガル | Residence Visa for Work Purposes | 雇用契約前提でビザ発行。滞在許可を得てから渡航。 |
🇪🇸 スペイン | Highly Qualified Professional Visa | 高学歴・高収入層向けの就労ビザ。ノマドビザとは別枠。 |
🇪🇪 エストニア | Work in Estonia(就労許可+居住許可) | 雇用契約に基づいて就労許可+居住許可を発行。 |
🇳🇱 オランダ | Highly Skilled Migrant | 年収要件あり。スタートアップビザとの組み合わせも注目。 |
🇸🇪 スウェーデン | Work Permit | 雇用契約と労働条件が審査される。滞在延長も可能。 |
🇫🇮 フィンランド | Specialist Permit / EUブルーカード | IT・工学系などの高度人材向け。EUブルーカード対応。 |
🇸🇬 シンガポール | Employment Pass | 大卒以上+最低月収要件。企業スポンサーが必要。 |
🇭🇰 香港 | General Employment Policy(GEP) | 専門職向け。学歴・職歴と職務内容の整合性が求められる。 |
🇦🇪 UAE(ドバイなど) | Work Residence Visa | 雇用主のスポンサー付きで発行。ノマド制度との併用も可能。 |
🇯🇵 日本 | 技術・人文知識・国際業務ビザ | 外国人向け代表的就労ビザ。大学卒業+雇用契約が必要。 |
🇰🇷 韓国 | E-7 ビザ | 特定技能職向け。学歴・経験・年収条件などで審査。 |
補足ポイント
- EUブルーカード:ドイツ、フランス、フィンランドなど複数国で共通利用可能
- ポルトガル:D3(高等技能ビザ)やD1(一般就労ビザ)なども存在
- エストニア:スタートアップに優しい国であり、就労許可の取得も比較的スムーズ
ノマド制度(デジタルノマドビザ)とは? 海外でリモートワークする新しい形
デジタルノマドビザとは、自国の会社やクライアントと仕事を続けながら、他国に中長期で滞在できるビザ制度です。
特徴
- 現地での雇用は不可(雇用主は国外にある必要)
- フリーランス・個人事業主・リモート会社員に対応
- 滞在期間は数ヶ月〜数年と幅広い
- 税制優遇がある国も存在
デジタルノマドビザの要件(例)
- リモートワークの実績または契約書の提出
- 最低月収(1,500〜4,000ユーロ程度)
- 滞在先の住居契約証明
- 海外保険の加入
ノマドビザ対応国
デジタルノマドビザは近年多くの国が発行しています。
国名 | ビザ名 | 滞在可能期間 | 最低収入要件(月額) | 備考 |
---|---|---|---|---|
エストニア | デジタルノマドビザ | 最大1年 | €3,504 | 世界初のデジタルノマドビザ導入国。 |
ポルトガル | D8ビザ | 最大5年 | €3,280 | 一時滞在ビザ(1年)と居住ビザ(5年)を提供。 |
スペイン | デジタルノマドビザ | 1年(更新可) | €2,268 | 配偶者や扶養家族も同伴可能。 |
クロアチア | デジタルノマドビザ | 最大1年 | €2,500 | 美しいアドリア海沿岸での生活が魅力。 |
ギリシャ | デジタルノマドビザ | 最大1年 | €3,500 | 歴史的な都市や島々でのリモートワークが可能。 |
マルタ | ノマドレジデンスパーミット | 1年(更新可) | €2,700 | 地中海の中心で英語環境のもと働くことが可能。 |
ドイツ | フリーランサービザ | 最大3年 | なし | フリーランスや自営業者向けのビザ。 |
チェコ | ズィフノビザ | 最大1年 | なし | フリーランス向けのビザを提供。 |
アイスランド | 長期滞在ビザ | 最大6か月 | $7,800 | 高い収入要件が特徴。 |
ラトビア | デジタルノマドビザ | 最大1年 | €2,875 | バルト三国の一つで、静かな環境が魅力。 |
バルバドス | Welcome Stamp | 最大1年 | $4,167 | カリブ海の美しいビーチが魅力。 |
バミューダ | Work From Bermuda Certificate | 最大1年 | なし | 高い生活水準と美しい自然環境。 |
コスタリカ | Rentistaビザ | 2年(更新可) | $2,500 | 豊かな自然と安定した政治環境。 |
メキシコ | 一時居住ビザ | 最大4年 | $2,100 | 文化的多様性と温暖な気候。 |
コロンビア | ビザタイプV | 最大2年 | $684 | 低い収入要件と多様な文化。 |
ブラジル | デジタルノマドビザ | 1年(更新可) | $1,500 | 多様な文化と自然環境。 |
アルゼンチン | デジタルノマドビザ | 6か月(更新可) | なし | ヨーロッパ風の都市景観と豊かな文化。 |
アラブ首長国連邦(UAE) | バーチャルワーキングプログラム | 1年 | $5,000 | ドバイなどの先進的な都市での生活が可能。 |
タイ | スマートビザ | 最大4年 | なし | 豊かな文化と美しいビーチが魅力。 |
インドネシア(バリ) | セカンドホームビザ | 最大5年 | なし | バリ島でのリモートワークが可能。 |
南アフリカ | デジタルノマドビザ | 最大1年 | なし | 多様な自然環境と文化。 |
韓国 | ワーケーションビザ | 最大2年 | ₩84,960,000 | 2024年から発給開始。 |
台湾 | デジタルノマドビザ | 最大180日 | $1,667 | 2025年から導入。 |
日本 | 特定活動ビザ(デジタルノマド) | 最大6か月 | なし | 2025年から導入。 |
各国のビザ要件や申請手続きは変更される可能性があるため、最新情報は各国の公式サイトや大使館で確認することをおすすめします。
就労ビザとノマド制度の違い
項目 | 就労ビザ | ノマドビザ |
---|---|---|
雇用形態 | 現地企業に雇用される | 海外企業やフリーランス契約 |
労働許可 | 現地での就労可 | 現地企業との就労は禁止 |
スポンサー | 雇用主が必要 | 基本的に不要(個人で申請) |
対象者 | 現地就職希望者 | リモートワーカー・ノマド |
滞在先での税務 | 居住者として課税される国が多い | 優遇税制ありの国も存在 |
どちらを選ぶべき?|あなたの目的に合わせたビザ選び
就労ビザが向いている方
- 現地企業での雇用や転職を目指す方
現地の企業での直接雇用を希望し、安定した職を得たい方には、就労ビザが適しています。 - 将来的に永住権の取得を考えている方
多くの国では、一定期間の就労ビザでの滞在を経て、永住権の申請資格が得られます。 - 安定した給与や福利厚生を重視する方
現地企業での雇用により、現地の労働法に基づく給与や福利厚生を受けることが可能です。
注意点:就労ビザの取得には、現地企業からの雇用契約やスポンサーシップが必要であり、手続きが複雑な場合があります。
ノマドビザが向いている方
- リモートワークを行うエンジニア、デザイナー、ライターなど
既にリモートで仕事をしており、場所に縛られずに働きたい方には、ノマドビザが適しています。 - 自由な国選びと生活スタイルを重視する方
自分の好みに合わせて居住地を選び、多様な文化や環境を体験したい方に適しています。 - 複数の国を移動しながら柔軟に働きたい方
一定期間ごとに異なる国で生活し、働くことを希望する方には、ノマドビザが適しています。
注意点:ノマドビザの条件や滞在可能期間は国によって異なり、更新が難しい場合や、現地での就労が制限される場合があります。
ビザ選びのポイント
- 収入源の確認:現地での収入を得る予定がある場合は就労ビザ、国外からの収入で生活する場合はノマドビザが適しています。
- 滞在期間の計画:長期的な滞在や永住を視野に入れる場合は就労ビザ、短期間や中期的な滞在を希望する場合はノマドビザが適しています。
- 手続きの複雑さ:就労ビザは取得手続きが複雑で時間がかかる場合がありますが、ノマドビザは比較的簡易な手続きで取得できる場合が多いです。
注意点:ビザの条件や手続きは国によって異なります。最新の情報を確認し、計画的に準備を進めることが重要です。
ご自身の目的や働き方に合わせて、最適なビザを選択されることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
- ノマドビザで現地の会社に就職できますか?
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原則できません。ノマドビザは「現地企業に雇用されず、自国の仕事を継続する人」向けの制度です。就職するには就労ビザへの切り替えが必要です。
- ノマドビザでも税金はかかりますか?
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多くの国で183日以上の滞在で居住者扱いとなり、所得税が発生します。ただし、一部の国では「非居住者向け優遇税制」などが設けられています。
- 英語しか話せないけど就労ビザは取れますか?
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国や職種によりますが、IT・マーケティング・国際営業などでは英語のみでも取得可能なケースがあります。
- ノマドビザから就労ビザに途中で変更できますか?
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多くの国では、ノマドビザから就労ビザへの切り替えは原則不可とされています。一度出国してから改めて就労ビザを申請する必要があるケースが一般的です。ただし、国によっては「滞在中のビザ変更」が可能な例外もあります。