スペイン非居住者向け Modelo 210(モデル210)の記入例|記入項目と注意点– スペインに不動産を所有している日本在住者や非居住者の方へ。Modelo 210の提出義務から、みなし所得の計算方法、記入手順、オンライン申請の流れまで、実務で役立つ情報をわかりやすく解説 –

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目次

はじめに|モデル210とは?

スペインに住んでいない非居住者(No residente fiscal)でも、スペイン国内に不動産を所有していたり、家賃収入や利子収入などの所得がある場合は、Modelo 210(モデル210)という納税申告書を提出する義務があります。

この申告は、日本からでもオンラインで行うことが可能ですが、書式が複雑でわかりにくいのが難点。

この記事では、賃貸していない不動産所有者を例にして、Modelo 210の記入例と注意点をわかりやすく解説します。

Modelo 210 の申告対象となる人(例)

  • スペインに物件(別荘・アパートなど)を所有しているが、自分で利用している
  • スペインで得た利子や配当などの所得がある
  •  賃貸物件から家賃収入を得ている(別パターン)

記入例|賃貸していない不動産所有者の場合

スペインに賃貸していない不動産(例:別荘や空き家)を所有している非居住者は、たとえ収入が発生していなくても、「みなし所得(Imputación de rentas)」に基づいてModelo 210による納税申告が必要です。

記入前の準備|必要な情報と書類

申告前に、以下の情報を手元に用意しておきましょう:

  • NIE番号(Número de Identidad de Extranjero):スペインでの外国人識別番号
  • 不動産のカダストロ番号(Número de Referencia Catastral):スペインの地籍台帳に登録された物件番号(登記簿やIBI通知書で確認)
  • 不動産の課税評価額(Valor Catastral):スペインでの不動産の固定評価額。これが申告の基準になります
  • 税率:非EU圏(日本在住者)の場合は 24%(EU圏なら19%)

Modelo 210 の入力項目と記入例(賃貸なし)

セクション記入内容(例)
1. タイプ申告タイプ:自発的(Autoliquidación)
2. 納税者情報名前、NIE、住所(日本)など
3. 所得タイプ210-A(Imputación de rentas) → みなし所得課税
4. 不動産情報カダストロ番号、所在地、面積など
5. 課税対象額課税評価額 × 1.1%(評価額が改定されていない場合)課税評価額 × 2%(改定済み)
6. 税額上記金額 × 24%(非EU圏、日本は対象)
7. 支払方法スペインの銀行口座 or バーチャルIBANで支払い指示

具体的な計算例|モデルケース

前提条件:

  • 不動産評価額(Valor Catastral):80,000ユーロ
  • 利用状況:賃貸なし、自己使用(vacant or second home)
  •  評価額は改定されていないものとする(→ 1.1%を適用)

ステップ1:みなし所得の算出
80,000€ × 1.1% = 880€

ステップ2:課税額の算出(税率24%)
880€ × 24% = 211.20€

この物件所有者は、211.20ユーロをModelo 210で申告し、納付する必要があります。

Modelo 210のオンライン提出方法|スペイン税務署公式サイトからの流れ

非居住者が提出するModelo 210は、スペイン税務署(Agencia Tributaria)の公式サイトからオンラインで提出することができます。

電子証明書(Certificado digital)なしでも、パスワードによる一時認証(NIF+納税者情報)で申告が可能です。

STEP

スペイン税務署公式サイトへアクセス

アクセス先: https://sede.agenciatributaria.gob.es

トップページから「Impuestos(税金)」→「No residentes(非居住者)」→「Modelo 210」を選択します。

または以下の直接リンクからアクセス: Modelo 210 専用ページ

STEP

オンライン提出画面へ進む

Presentación por Internet con predeclaración」または「Sin certificado electrónico(電子証明書なし)」を選択します。

ログイン方法:

  • NIE番号(外国人識別番号)
  • 納税者名・連絡先情報の入力
  • スペインでの登録情報と一致していればログイン可能(電子署名なし)

 注意:初回利用時はエラーが出ることがあるため、ブラウザはChromeかFirefox推奨。ポップアップを許可してください。

STEP

フォームへの入力

基本情報

  • 納税者名(ローマ字)
  • NIE番号
  • 日本の住所・郵便番号・連絡先(Eメール含む)

所得区分の選択

  • 「Tipo de renta」→ Imputación de rentas inmobiliarias(みなし所得)
  • 年度(Ejercicio):例)2024年分を申告するなら「2024」

不動産情報

  •  物件の所在地(通り名、番地、郵便番号、自治体)
  •  カダストロ番号(地籍番号、登記簿やIBI通知で確認)
  •  Valor Catastral(課税評価額)
  •  利用目的:Uso propio(自己利用)

税額計算

  • 自動で「Valor Catastral × 1.1% または 2.0%」が計算されます
  • 非EU居住者の場合、24%が自動計算されます
STEP

提出・確認・PDFダウンロード

  • 入力完了後、「Validar(検証)」ボタンを押してエラーチェック
  • 問題がなければ「Firmar y Enviar(署名して提出)」をクリック
  •  最後に、提出完了PDF(resguardo de presentación)が生成されます

これは納税証明になるので必ず保存してください(PDF形式)

STEP

支払い方法を選択

① スペイン国内の銀行口座からの口座引き落とし(Domiciliación bancaria)

  • 入力したスペインの銀行口座から自動引き落としされます
  • 提出と同時に引き落としの指示が出される
  • スペインに口座を持っている非居住者(例:Sabadell, Caixaなど)は便利

注意:提出締切の5営業日前までしか選べない

(例:12月31日が期限なら、引き落とし提出は12月24日まで)

② バーチャルIBAN(Número de Referencia Completo)を使った送金

  • 提出完了後に生成される「NRC(Número de Referencia Completo)」を使って、スペイン税務署指定の口座に国際送金(SEPAまたはSWIFT)を行います
  • •日本から送金する場合は、Wise(旧TransferWise)や海外送金対応の銀行(新生銀行、SMBC信託など)などを利用して送金可能

振込時の注意:

• 振込名義人が納税者と一致していること

• NRCコードを振込メモ欄に記載

STEP

支払い完了を確認

支払い後に確認すること

税務署のページから、「Consulta de declaraciones presentadas(提出済み申告の確認)」にアクセスし、 正しく反映されていれば、完了

実務ポイントまとめ

項目内容
電子証明書なしNIEがあれば申告可能(簡易ログイン可)
提出期限翌年12月31日まで(例:2024年分 → 2025年12月31日)
支払い方法スペイン口座引き落とし または 国際送金(バーチャルIBAN)
提出証明提出完了PDF(resguardo)は必ず保存

提出時の注意点

  • 申告期限:対象年の 翌年12月31日まで (例:2024年分 → 2025年12月31日までに申告)
  • 言語対応:フォームはスペイン語のみ。間違い防止のため、オンライン翻訳ツールや専門家のサポートを推奨
  • 提出方法:Agencia Tributaria(スペイン税務署)の公式サイトからオンライン提出可(電子証明書なしでもOK)
  • 支払い:支払証明(resguardo)を必ずPDF保存し、証拠として保管

まとめ|知らなかったでは済まされない、非居住者の税申告

スペインに不動産を所有している日本在住者の多くは、「収入がなければ税金も不要」と思いがちですが、実際にはそうではありません。

スペインでは、非居住者であっても物件を所有しているだけで「みなし所得課税」の対象となり、Modelo 210の提出が義務付けられています

知らずに放置してしまうと、将来的に不動産を売却する際や、ビザ関連の審査時にトラブルになる可能性も。

毎年の税額自体はそれほど高額ではないケースが多いため、正しく申告してリスクを回避することが何よりも大切です。

以下に、今回のポイントを簡単に整理しておきます。

内容非居住者(例:日本在住で物件所有)
申告義務あり(モデル210)
所得種別みなし収入(Imputación de rentas)
税率24%(日本は非EUのため)
提出期限翌年12月31日まで
提出方法オンライン or 紙ベース(非推奨)

スペインの税制は複雑に見えますが、ポイントさえ押さえれば個人でも対応可能です。初めての方や、複数物件を所有している方は、税理士やGestoría(申告代行)への相談も選択肢に入れてみてください。

将来的なトラブルを避けるためにも、正しい知識と早めの準備を心がけましょう。

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