スペイン居住者の確定申告|Declaración de la Renta の基礎知識と申請方法– スペインに居住しているなら、全世界所得を正しく申告する義務があります。初めてでも迷わないように、必要な書類からオンライン申告の流れ、注意点、還付・納付方法までを一通り解説 –

スペイン居住者の税金税制に関する記事のアイキャッチ画像

スペインに居住している方は、毎年「Declaración de la Renta(確定申告)」を行う必要があります。

これは日本での確定申告に相当し、その年のすべての所得(国内外問わず)をスペインに申告し、所得税(IRPF)を納める制度です。

本記事では、スペイン居住者が押さえるべき申告のルール・対象となる所得・申告手順・必要書類・注意点をわかりやすく解説します。

目次

スペインで「確定申告」が必要な人とは?

税務上の「居住者」に該当する基準

以下のいずれかに該当する場合、スペインでは「税務上の居住者(residente fiscal)」と見なされます。

  • 1年のうち183日以上スペインに滞在している
  • 主たる経済活動の拠点がスペインにある(家族が居住している場合も含む)

この居住者に該当する場合、「全世界所得(renta mundial)」がスペインで課税対象となります。

申告が必要な所得の種類とは?

国内外すべての収入が対象に

スペインでは居住者に対し、以下のような世界中の所得に対して申告義務が課されます。

主な課税対象所得一覧(例)

所得区分具体例
給与所得スペイン企業・日本企業からの給与
自営業収入フリーランス報酬、個人事業収入など
投資収益株式譲渡益、配当金、利子収入など
不動産収入賃貸収入(スペイン・日本いずれも)
年金収入公的・私的年金(日本の厚生年金も対象)

ポイント:日本で課税済みの所得も、スペインでの再申告が必要になります。ただし日西間の二重課税防止条約に基づき、外国税額控除を受けることが可能です。

確定申告の手続き方法と流れ

Renta Webでのオンライン申告が主流

スペインでは「Agencia Tributaria(税務署)」が提供するRenta Web(レンタウェブ)というシステムを利用して、オンラインで確定申告が可能です。

【ステップ】Renta Webでの確定申告の手順(2025年度分)

STEP
税務署からの通知を受け取る

スペインの税務署(Agencia Tributaria)は、毎年4月上旬になると、登録メールやSMSを通じて申告開始の通知を送付します。この通知には、オンライン申告用のアクセス情報や案内リンクが記載されています。

通知は「Cl@ve」や「電子証明書」の登録アカウント宛に届くため、事前に有効な認証手段を準備しておきましょう。

STEP
「Renta Web」にログインし、ドラフトを確認

Agencia Tributariaの公式サイトから「Renta Web」にアクセスします。

  • 認証方法:Cl@ve PIN、DNI electrónico(電子身分証)、電子証明書(Certificado Digital)など
  • ログイン後、自動作成された「ドラフト(borrador)」が表示されます
  • ドラフトには、過去の申告履歴、雇用主や銀行から提出されたデータが自動反映されています

ドラフトはあくまで“たたき台”であり、正確性を自分で確認・修正する必要があります

STEP
内容に誤りがないか確認・修正

ドラフト内容を確認し、自身で以下の点をチェック・修正します:

  • 海外収入(例:日本からの給与や配当など)が正しく入力されているか
  • 控除(住宅ローン控除、教育費、外国税額控除など)の漏れがないか
  • 家族構成、扶養控除、自治体控除などの反映は適切か

海外の所得や控除は自動反映されないため、自分で手動入力が必要なケースが多いです。

STEP
納税または還付の方法を指定して申告提出

入力内容がすべて正しいことを確認したら、以下を選択します。

  • 納税額がある場合:一括支払いまたは2回分割支払い(60%+40%)を選択
  • 還付がある場合:スペイン国内の銀行口座を指定して還付を受け取る

提出は「Firmar y Enviar(署名して送信)」ボタンをクリックするだけで完了します。

提出後、PDF形式の受領書がダウンロードできるので、必ず保存・印刷しておきましょう。

このように、オンラインでの確定申告手続きは簡便ですが、海外所得や控除内容の確認は慎重に行う必要があります

特に日本との二重課税回避措置を正しく適用するには、必要な証明書類や入力ミスのチェックが重要です。

申告期間(2025年度分の例)

内容期間(例)
申告開始2025年4月3日ごろ
締切2025年6月30日

年度ごとの日程は多少前後するため、公式サイトで最新情報を確認してください(Agencia Tributaria公式ページ)。

オンライン申告に必要な準備書類・情報

Renta Webでオンライン申告を行うには、以下のような情報と書類を事前に用意しておく必要があります。

特に国外収入や控除を申請する場合は、追加書類が求められることが多いため注意が必要です。

必要情報・書類一覧(テーブル形式)

カテゴリ具体的な内容補足・ポイント
認証手段– Cl@ve PIN- DNI electrónico(電子身分証)- Certificado Digital(電子証明書)Renta Webにログインする際に必要。事前取得が必須
個人情報– NIEまたはNIF(納税者番号)- 氏名・住所・生年月日NIEは外国人居住者に発行されるID。住所変更がある場合は要更新
所得証明– スペイン国内の給与明細書(nómina)- 銀行取引明細(cuentas bancarias)- 投資収益や配当通知書(certificados de dividendos)- 日本からの給与・年金・副業収入など海外の収入証明はスペイン語翻訳+アポスティーユ認証が求められることがあります
控除証明– 住宅ローン利子支払証明(intereses hipotecarios)- 教育費(子どもの学費など)- 寄付金受領証(donaciones)- 外国税額控除証明書(日本での納税証明)正しい控除を受けるためには、証明書の形式や内容が基準を満たしているか要確認

翻訳・認証が必要な書類の例

  • 日本の源泉徴収票(Gensen Choshuhyo)
  • 年金振込通知書
  • 税務署発行の納税証明書(納付済証明書)など

これらはスペイン語への公認翻訳(Traductor Jurado)と、アポスティーユ認証が必要になるケースがあります。特に控除申請時は正確性が重視されるため、正式な手続きを経た文書を用意することが大切です

[補足]書類準備は申告開始前に余裕を持って

  • 日本から書類を取り寄せる場合、発行〜翻訳〜認証までに1〜2ヶ月かかることもあります
  • 翻訳は公認翻訳者(traductor jurado)によるものが原則
  • 書類が不完全なまま申告すると、後から修正・調査の対象になる可能性があります

特に初年度の申告では、日本とスペインの税制の違いに戸惑うケースが多いため、事前準備と専門家の確認がおすすめです。


納付・還付の方法とスケジュール

スペインでの確定申告を行った結果、税金を払いすぎていた場合は還付(返金)、逆に**不足がある場合は納付(支払い)**が必要になります。

還付がある場合

  • スペイン国内の銀行口座を指定すれば、申告後自動で還付金が振り込まれます
  • 還付までの期間は通常申告後1〜2ヶ月以内が目安です
  • 還付金の状況は「Renta Web」内の追跡機能(Estado de tramitación)で確認できます

多くの場合、申告内容に誤りがなければスムーズに振込処理されます。ただし、控除や国外所得の内容に疑義がある場合は遅れることもあります。

納税が必要な場合

申告の結果、納税額が発生する場合は以下の2つの支払い方法から選べます。

支払い方法内容スケジュール
一括払い申告時に全額を一度に支払う提出と同時に納付
分割払い(2回)– 第1回:申告時に60%を支払い- 第2回:11月初旬に40%が自動引き落としRenta Webで分割を選択すると自動適用

💡 分割払いを選ぶと、第2回の引き落としはスペイン国内の銀行口座から自動で行われるため、口座残高の管理に注意が必要です。

申告漏れ・未申告時のリスク

スペインの税務制度では、正確かつ期限内の申告が義務付けられています。申告忘れや一部所得の記載漏れがあると、ペナルティや調査対象となる可能性があります。

考えられるペナルティ一覧

  • 延滞利息(intereses de demora):期限後の納付に対する日数ベースの利息
  • 追加課税(recargo):軽度の申告漏れに対する罰金(5~20%が一般的)
  • 重大違反:虚偽申告や意図的な隠ぺいが認められると、高額の罰金や税務調査の対象となることも

注意:海外資産の未申告は重い罰則対象に
日本の銀行口座・証券口座・不動産などの海外資産は、Modelo 720(国外資産申告)にて報告が義務付けられています。未提出や虚偽申告の場合、最大で資産額の150%に相当する罰金が課されることもあります。

初めての申告は専門家への相談がおすすめ

スペインでの確定申告は、日本と制度が大きく異なるため、とくに移住初年度は専門家のサポートが有効です。

つまずきやすいポイント例

  • 日本語の書類がそのまま使えない(翻訳・認証が必要)
  • 外国税額控除の計算が複雑(日本とスペインの課税方式の違い)
  • 控除制度の違い(住宅ローンや寄付金控除の対象条件が異なる)
  • 扶養控除や自治体ごとの特別控除が分かりづらい
  • Modelo 720やForm 210などとの整合性も注意が必要

専門家に依頼するメリット

スペイン税制に精通したGestoría(ジェストリア)や、国際税務に詳しい税理士(Asesor Fiscal)に依頼すれば、

  • 正確な申告書の作成
  • 控除の最大活用
  • 納税・還付手続きの代行
  • スペイン語での当局対応もサポート可能

「初年度はプロに依頼し、2年目以降は自分で対応」という移住者も多く、最初の年に正しく基礎を整えることが、今後の安心につながります

まとめ|正確な確定申告でスペイン生活を安心に

スペインで税務上の居住者となった場合、日本を含む全世界の所得を正確に申告する義務があります。

  • 日本で納税済みの収入もスペインに申告
  • 二重課税は防止条約に基づく控除で対応
  • Renta Webでのオンライン申告が便利
  • 書類の準備・誤記に注意
  • 不安な場合は専門家に依頼

移住後の確定申告は、今後の生活基盤にも直結します。初年度はとくに注意し、正しく対応しましょう。

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