クロアチアが移住先として人気の理由
クロアチアは、美しいアドリア海沿岸と歴史的な街並みが魅力の国で、近年ではリモートワーカーや移住者の新たな移住先として注目を集めています。首都ザグレブや観光都市ドゥブロヴニクでは観光業を中心とした就労機会もあり、比較的物価が安いため、生活コストを抑えながら快適に暮らせる点が魅力です。一方で、英語が通じる場面が限られていることや、行政手続きの煩雑さには注意が必要です。
基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
首都 | ザグレブ(Zagreb) |
通貨 | クロアチア・クーナ(HRK) ※2023年よりユーロに移行 |
人口 | 約390万人 |
公用語 | クロアチア語 |
主要都市(人口) | ザグレブ(80万人)、スプリト(17万人)、リエカ(12万人) |
代表的な大学 | ザグレブ大学、スプリト大学、リエカ大学 |
生活の質評価 | 6.2/10 |
治安指数 | 30/100(低リスクで比較的安全) |
クロアチアの興味深い事実
- クロアチアは「ヨーロッパのハワイ」と呼ばれるほど、美しい海岸線と島々で有名
- アメリカの人気ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のロケ地が多数存在
- 2023年にユーロとシェンゲン協定に正式加盟し、欧州内の移動がより便利に
- 世界最小の都市「フム(Hum)」がある国としても知られている
ビザ・移住手続き
クロアチアでは、就労・学業・長期滞在など多様な目的に応じたビザ・滞在許可制度が整備されています。EU/EEA圏の市民は自由に居住・就労できますが、それ以外の国籍を持つ場合は、長期滞在にはビザと滞在許可の取得が必要です。
長期滞在を希望する場合、通常は日本国内のクロアチア大使館を通じてビザを申請し、入国後に現地の警察署で滞在許可(Temporary Stay)を取得する流れとなります。リモートワーカー向けの「デジタルノマド滞在許可」や自営業者向けのビザなど、ニーズに応じた選択肢が用意されています。
主なビザ・滞在許可の種類
- デジタルノマド滞在許可(非EU国籍者のリモートワーカー向け、最大1年)
- 就労許可付き滞在許可(クロアチア国内企業との雇用契約が必要)
- 自営業・起業家向け滞在許可(個人事業主やスタートアップ創業者向け)
- 学生滞在許可(クロアチアの大学などへの正規留学)
- 家族統合滞在許可(滞在者の配偶者や子どもが対象)
- 不動産所有者向けの滞在許可(定住には不可・短期的な滞在用)
注意:クロアチアでは「入国ビザ(VISA)」と「滞在許可(Residence Permit)」は別手続きであり、長期滞在には入国後の追加申請が必須です。
詳細は在日クロアチア大使館および内務省(MUP)の公式ページを確認しましょう。
仕事・給与水準
クロアチアはアドリア海沿岸の美しい環境と、比較的低コストな生活費から注目を集める移住先ですが、就職市場はEU内でも競争がやや厳しい部類に入ります。2025年時点の失業率は約6.5%前後と、コロナ禍を経て改善傾向にはありますが、若年層や地方部では高めの水準が続いています。
そのため、クロアチア移住を検討している方は、現地渡航前にリモートワークや就職の準備を進めることが重要です。特に英語が活かせる分野や国際企業の拠点がある都市(ザグレブ・スプリトなど)での求人は、外国人にとっても比較的見つけやすい傾向があります。
現地では、ITやグローバル業務に関する求人で外国人の採用が活発になっています。一方で、一般的な給与水準は西欧諸国に比べてやや低めであり、物価の安さと併せて検討する必要があります。
求人が多い主要業種
- IT・ソフトウェア開発(特に外資系アウトソーシング企業)
- カスタマーサポート・BPO
- 観光・ホスピタリティ(英語対応人材)
- 医療・介護(特定資格保有者向け)
高需要な職種例
- フルスタックエンジニア/バックエンド開発者
- ITサポート/テクニカルサポート
- カスタマーサクセスマネージャー(英語+第二言語)
- 医療スタッフ(EU資格保有者)
クロアチアの一般的な労働条件
項目 | 内容 |
---|---|
所定労働時間 | 週40時間 |
試用期間 | 通常3〜6ヶ月 |
年間有給休暇 | 年間最低20日(10年勤務で25日まで増加) |
祝日 | 年間13〜14日程度(国定+一部宗教祝日) |
主な福利厚生 | 医療保険、失業保険、育児休暇、退職年金制度など |
クロアチアはEU労働基準に準じた法制度が整っており、社会保障や医療制度が比較的充実しています。特に、長期的に暮らす予定がある場合は、雇用契約の種類や社会保険の条件を事前に確認することが大切です。
主な就職先(国際企業・外資系)
- Infobip(クロアチア発のユニコーンIT企業)
- IBM Croatia(ITソリューション)
- Teleperformance(BPO・カスタマーサポート)
- Adriatic Luxury Hotels(観光・ホテル業)
給与水準(目安)
項目 | 金額(クロアチア国内平均) |
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平均月収 | 約1,100ユーロ(2023年) |
最低月給(法定) | 約700ユーロ(手取りベース) |
高収入職種の例 | |
ソフトウェアエンジニア | 約1,800〜2,500ユーロ/月 |
ITプロジェクトマネージャー | 約2,500〜3,500ユーロ/月 |
医師(専門医) | 約2,000〜3,000ユーロ/月 |
地域別の給与差
地域 | 平均月収(目安) |
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ザグレブ | 約1,200〜1,400ユーロ |
スプリト | 約1,000〜1,200ユーロ |
地方都市部 | 約800〜1,000ユーロ |
住居
住居タイプと短期・長期の選択肢
クロアチアでは、以下のような住居タイプが一般的です:
- スタノヴァン(Stanovan):集合住宅・アパートタイプ(日本で言う「ピソ」)
- クチャ(Kuća):一軒家(郊外や地方都市で多い)
- ルームシェア・シェアフラット:若年層や短期滞在者に人気
短期滞在向けにはAirbnbやコリビング施設が増えており、特にザグレブやスプリトでは外国人向けの物件も多く見られます。長期滞在者は通常、6か月〜1年契約のアパート賃貸を選ぶことが多いです。
補足:長期ビザ申請時には、クロアチア現地の住居契約書(賃貸契約)が必要とされるため、物件の確保は申請前に済ませる必要があります。
家賃相場と都市ごとの傾向
都市 | 1LDKアパート(中心部) | 1LDKアパート(郊外) | 2〜3LDKファミリー物件 |
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ザグレブ | €550〜€800 | €400〜€600 | €800〜€1,200 |
スプリト | €500〜€750 | €350〜€500 | €750〜€1,100 |
ドゥブロヴニク | €600〜€900 | €450〜€650 | €900〜€1,300 |
地方都市(例:オシエク) | €300〜€500 | €250〜€400 | €500〜€800 |
- 家具付き(namješten)物件が主流で、生活開始がしやすい
- 夏季(6〜9月)は観光需要の影響でリゾートエリアの家賃が高騰する傾向あり
- 新築・改装済み・エレベーター有無によっても家賃が大きく変動
賃貸物件の探し方と契約時の注意点
主な物件探しの方法:
- 【Webポータル】Njuškalo.hr、Index Oglasi(クロアチア最大級)
- 【エージェント】英語対応の不動産会社(Zagreb4U, RealEstateCroatiaなど)
- 【SNS】Facebookグループ(“Expats in Zagreb”などで物件情報交換あり)
契約時の注意点:
- 契約書はクロアチア語が基本 → 英語併記を求める or 専門家に翻訳依頼
- 必要書類:パスポート、滞在許可証または申請控え、収入証明(任意)
- 初期費用:1か月分の家賃+デポジット(1〜2か月分)+仲介手数料(1か月分が目安)
- 電気・水道・ネットは別料金のケースが多いため、月額費用も要確認
アドバイス:詐欺や過剰請求を避けるため、不明点は契約前に必ず確認し、できれば日本語サポートや信頼できるエージェント経由で契約するのが安全です。
銀行口座の開設
クロアチアで生活するうえで、現地銀行口座の開設はほぼ必須です。家賃支払いや給与受け取り、公共料金の引き落としなどに使われます。外国人でも比較的スムーズに開設できますが、ビザや滞在許可証の提示を求められるケースが多いです。
銀行口座開設に必要な書類(一般的な例)
- パスポート
- 滞在許可証(または申請中である証明)
- クロアチア国内の住所証明(賃貸契約書など)
- 雇用契約書や就学証明(該当する場合)
短期滞在者向けの非居住者口座(devizni račun)も一部銀行で開設可能。ただし、機能制限があるため長期滞在者は居住者口座(žiro račun)を推奨。
主要銀行と特徴
銀行名 | 特徴 |
---|---|
Zagrebačka banka | クロアチア最大手。オンラインバンキングも強い |
PBZ(Privredna banka Zagreb) | イタリアUniCredit傘下。英語対応あり |
Erste Bank | オーストリア系。外国人対応に定評あり |
OTP banka | ハンガリー系。地方にも支店が多い |
Revolut / Wise | 欧州発のオンライン銀行。IBAN付きで送金にも便利 |
RevolutやWiseは、アプリで口座管理・海外送金が簡単にできるため、デジタルノマドや短期滞在者にも人気です。
海外送金の方法と手数料
クロアチアから日本や他国への送金は、従来のSWIFT送金に加えて、オンライン送金サービスの利用が増加しています。手数料の明瞭性・着金スピードで選ぶのがポイントです。
よく使われる送金手段
サービス | 特徴 |
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Wise(旧TransferWise) | 実勢レートに近く、手数料が安く済む。ユーザー数も多い |
Revolut | 一定額まで送金無料。通貨両替機能も便利 |
Western Union / MoneyGram | 現金受取が可能。為替手数料はやや高め |
銀行送金(SWIFT) | 安全性は高いが、着金までに日数がかかり、手数料も高め |
海外送金時の注意点
- €10,000相当以上の送金・受取は、税務申告や報告義務が発生する可能性あり
- 頻繁な送金は、居住税制上の影響(多重課税)に注意
- 日本側でも受取に税金や手数料が発生する場合がある
クロアチアで生活費を管理する上で、Wise+Revolutの併用は特におすすめです。ユーロ建て資産と円の出し入れを柔軟に管理できます。
医療制度と健康保険
クロアチアでは、国民健康保険制度(HZZO:Hrvatski zavod za zdravstveno osiguranje)により、すべての居住者が基本的な医療サービスを受けることができます。ビザの種類や滞在資格によっては、加入が義務付けられるケースもあります。
医療オプション
種別 | 内容 |
---|---|
公的医療(HZZO) | 所得に応じた保険料を納付することで、ほとんどの医療サービスが無料または低額で提供される。家庭医、専門医、入院、薬局などが対象。 |
民間医療保険 | 公的医療の待機時間の短縮や、私立クリニックの利用を目的に契約するケースが多い。外国人向けのプランもあり。 |
注意:HZZOに加入していない場合、公的病院でも自己負担100%(全額自己負担)となるため、長期滞在者は必ず保険加入が必要です。
民間医療保険の費用目安
年齢層 | 月額保険料の目安(€) |
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20〜40代 | €30〜€60 |
50〜60代 | €60〜€100 |
高齢者・既往歴あり | €100〜€150前後 |
- 外資系保険(Allianz、Wiener、Generaliなど)は英語対応あり
- カバー内容(通院、検査、入院)や免責額によって料金が大きく変動
- ビザ申請時に必要な場合、「クロアチア全土で有効な医療保険」であることが要件
公的保険(HZZO)加入の流れ(長期滞在者)
- 滞在許可証取得後に申請可能
- 最寄りのHZZOオフィスで登録(英語不可のことが多いため、サポート同行推奨)
- 保険料の納付(2024年現在、月額約€80前後)
- 登録後に保険カード(健康保険証)が発行され、公的医療機関で利用可能に
クロアチア移住を検討するなら、公的医療制度の基本と、補完的な民間医療保険の使い分けを理解しておくことが重要です。
特にビザ申請時は「有効な医療保険の加入証明」が必須要件となることが多いため、事前の準備を忘れずに。
現地の生活・生活費
クロアチアは、西ヨーロッパ諸国に比べて生活費が全体的にリーズナブルで、特にザグレブやスプリト以外の都市では、より低コストで生活することができます。2024年のNumbeo調査によると、クロアチアの生活費ランキングは121カ国中56位。これはポルトガルやエストニアと同程度であり、西欧諸国より明らかに安価です。
クロアチアの生活費(目安)
項目 | 費用(目安) |
---|---|
ザグレブ中心部の1LDK賃貸 | 約€650/月 |
スプリトの1LDK賃貸(中心部) | 約€600/月 |
地方都市(オシエクなど)の1LDK | 約€400〜500/月 |
食費・交通費・光熱費を除く生活費(1人) | 約€600〜700/月 |
光熱費(電気・水道・暖房・通信など) | 約€120〜150/月 |
特にアドリア海沿岸地域では夏季の観光シーズンに家賃が上昇するため、長期滞在を予定している方は年間契約の物件を早めに確保するのがおすすめです。
物価の高い都市(観光地・人気エリア)
- ドゥブロヴニク
- スプリト
- ザグレブ(首都)
物価の安い都市(内陸部・地方)
- オシエク
- ヴァラジュディン
- シサク
まとめ
クロアチアは、温暖な気候、美しい海岸、手頃な生活コストという3点がそろった魅力的な移住先です。近年はユーロ導入(2023年)・シェンゲン協定加盟によって、欧州内の移動・送金・取引もスムーズになっています。
特に注目すべきポイント:
- デジタルノマド滞在許可の導入により、リモートワーカーに人気上昇中
- 生活コストを抑えながら欧州での生活を実現できる
- 英語は若年層・都市部を中心に通じるが、地方ではクロアチア語の習得が鍵
- 医療制度やビザ手続きはEU基準で整備されている一方で、行政手続きの煩雑さや待機時間の長さには注意が必要
クロアチア移住に向いているのはこんな人:
- 地中海沿岸のライフスタイルを楽しみたい人
- 生活費を抑えて欧州生活をしたいデジタルノマド・リモートワーカー
- リタイア後の第二の人生を探している中高年層
- 英語がある程度通じる環境で、比較的安心して暮らしたい人
クロアチアへの移住を検討している方は、滞在目的に応じたビザ選び、医療保険の確保、住居契約のタイミングなどを事前に整理しておくことで、よりスムーズに現地生活をスタートできます。
