フランスへの移住を考える際、住居・ビザ・仕事などと並んで重要になるのが「お金」に関する準備です。
税制の仕組みや現地銀行口座の開設、日本との送金方法を理解していないと、予期せぬコストや手続き上のトラブルに繋がることもあります。
この記事では、移住者が直面しやすい「お金」に関する基礎知識を一通りご紹介し、それぞれのテーマに特化した詳しい解説記事にもリンクを設けています。
フランスで安心して新生活をスタートするための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
フランスの税制|居住者税・非居住者税・二重課税・確定申告の基本
フランスの所得税は、まずその人が「居住者(résident fiscal)」か「非居住者(non-résident fiscal)」かによって課税方法が異なります。
居住者とみなされる条件
以下のいずれかに該当する場合、フランスの税務上の居住者と判断されます。
- フランス国内に主要な住居(foyer)を有している
- フランス国内で主な経済的利益(職業活動・所得の中心など)を有している
- 1年間に183日以上フランス国内に滞在している
居住者とみなされた場合、全世界所得が課税対象となります。
つまり、日本で得た給与収入、不動産収入、副業の利益なども、フランスで申告・課税対象となります。
非居住者とは?
フランスに住居も主要な経済拠点もなく、滞在日数も短期(原則183日未満)にとどまる場合、「非居住者」として扱われます。
非居住者の場合は、フランス国内源泉の所得のみに課税されます。
たとえば、フランス国内にある不動産からの賃貸収入や、フランス法人から受け取る報酬などが対象となります。
非居住者に対しては、特別な固定税率(通常20%から、一定以上の所得には30%)が適用される仕組みとなっています。
二重課税防止条約(日本との関係)
フランスと日本は二重課税防止条約を締結しており、同じ所得に対して日本とフランスの両方で税金が課されるのを防ぐ仕組みが設けられています。
たとえば、日本で源泉徴収された給与や配当をフランスで申告する場合、外国税額控除(crédit d’impôt)を利用することで、日本で支払った税額分をフランスの税額から差し引くことが可能です。
ただし、この控除を適用するためには、日本で納税した証明書類(たとえば源泉徴収票など)の提出が必要です。
実際の申告は、フランス税制に詳しい税理士や専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
銀行口座の開設方法|フランスでの手続きとおすすめ銀行
フランスで賃貸契約を結んだり、給与を受け取ったり、日本からの送金を管理したりするためにも、現地の銀行口座はほぼ必須です。
一方で、外国人が口座を開設するには、通常、住民登録(Attestation de domicile)の証明が求められ、銀行によって必要書類や対応状況が異なります。
フランスの銀行口座を開設するには
外国人が銀行口座を開設するには、以下の書類が一般的に必要とされます。
- パスポート(またはEU居住者の場合はIDカード)
- 住民登録証(電気・ガスなど公共料金の請求書、または賃貸契約書)
- 滞在許可証(Titre de séjour、必要な場合)
- 就労証明書または収入証明書(雇用契約書、給与明細など)
銀行によっては、税番号(Numéro fiscal)が後から必要となる場合もありますが、口座開設時点では必須ではないケースが多いです。
非居住者でも作れる口座はある?
フランス国内に住民登録がない場合、通常の銀行口座(Compte courant)の開設は難しいことが多いです。
しかし、一部のオンラインバンク(例:Revolut、Wise)では、非居住者向けにユーロ建て口座を提供しているケースもあります。
ただし、住所証明や本人確認手続き(ビデオ認証など)が必要になるため、事前に各サービスの条件を確認しておきましょう。
主な銀行の特徴
銀行名 | 特徴 | 外国人対応 |
---|---|---|
BNP Paribas | フランス最大手。英語対応支店もあり安心感が高い | 大都市で英語対応可 |
Société Générale | オンラインバンキングが整備されており、留学生プランも充実 | 支店によるが英語対応あり |
Crédit Agricole | 地方にも強いネットワーク。地域によって柔軟な対応 | 英語不可の支店もあり |
Revolut(オンライン) | 完全オンライン対応。フランス居住者向けIBAN発行可 | 英語・フランス語両対応、オンライン完結 |
口座維持手数料の目安
フランスでは、一般的な銀行口座(Compte courant)には月額5〜10ユーロ程度の維持手数料がかかります。
ただし、若年層向けのプラン(通常26歳未満)や給与振込設定のある場合、手数料が無料または割引されることもあります。
銀行ごとの条件を事前にチェックしておきましょう。
オンラインバンクという選択肢
対面での手続きが難しい場合や、すぐに口座を開設したい場合には、オンライン銀行も人気です。特に以下のサービスは移住者にも好評です。
- Revolut:多通貨アカウントを保有でき、ユーロ建て口座も利用可能
- Wise(旧TransferWise):国際送金に強み、日本との送金にも便利
- N26:ドイツ発ですがフランス在住者向けアカウントも開設可能
補足:言語の壁に備えて
フランスの銀行でも、すべての窓口担当者が英語を話せるわけではありません。
特に地方都市ではフランス語のみの対応が一般的なため、基本的な銀行手続き用語や必要書類に関する表現を事前にメモしておくと安心です。
また、オンラインバンクを利用する場合でも、契約条件や重要事項はフランス語表記が基本のため、注意が必要です。
海外送金の方法|日本とフランス間でのコストを抑えるには
日本の口座からフランスへ送金する場合、またはフランスから日本の口座に送金する場合、銀行手数料や為替レートの差によって大きなコストが発生することがあります。
最近では、従来の銀行経由よりもコストを抑えられるフィンテック系の送金サービスを利用する人が増えています。
代表的なサービス
Wise(旧TransferWise)
実際の為替レートに近いレートで送金でき、手数料も明確。日本からフランスへの送金にも対応しており、特に少額・中額送金でコストパフォーマンスが高いです。

Revolut
多通貨アカウントを保有できるサービスで、ユーロと円の両方で資金管理が可能。送金スピードも速く、アプリが使いやすい点も魅力です。フランスでも一般的な決済手段として広く利用されています。
N26
ドイツ発のオンラインバンクですが、フランス居住者向けアカウントも提供しており、ユーロ建て取引に非常に便利です。
日本の銀行口座と直接の接続はありませんが、WiseやRevolutを併用することでスムーズな送金が可能です。

銀行経由での送金について
フランスの一般銀行(BNP Paribas、Société Généraleなど)から日本の口座へ直接送金することも可能ですが、SWIFTコードの入力や中継銀行手数料が発生するケースが多く、特に少額送金では割高になる傾向があります。
また、着金まで数営業日かかることも一般的です。
まとめ|最適な手段を選ぶポイント
フランスに長期滞在・移住を予定している方は、低コストかつスピーディな送金手段を事前に把握しておくことが重要です。
- 家賃支払い
- 生活費の送金
- 家族への仕送り
- 投資資金の移動
など、目的に応じて、銀行経由・フィンテックサービスを使い分けるのがおすすめです。


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