フランスへの移住や長期滞在を考える際、避けて通れないのが「ビザの取得」です。本記事では、フランスのビザ制度の概要、主なビザの種類、申請手続きの流れ、必要書類について詳しく解説します。フランスでの滞在をスムーズに始めるために、ぜひ参考にしてください。
フランスのビザ制度の基本
フランスは滞在目的に応じて、さまざまなビザ制度を設けています。以下は代表的なビザのカテゴリーです。
- 就労ビザ(Visa de travail)
雇用契約に基づき、フランスでの就労を目的とするビザ。 - 学生ビザ(Visa étudiant)
フランスの大学・専門学校・語学学校などに通うための長期学生ビザ。 - 起業家・自営業ビザ(Visa entrepreneur / profession libérale)
フリーランスや自営業、スタートアップを立ち上げる人向けのビザ。 - 家族滞在ビザ(Visa de regroupement familial)
フランスに合法滞在する家族(配偶者・子どもなど)と合流するためのビザ。 - タレント・パスポート(Passeport talent)
高度人材や投資家、アーティスト、研究者などの専門職向け長期ビザ。 - 永住権・市民権(Carte de résident・Naturalisation)
長期滞在後に申請可能な居住カードやフランス国籍取得。
フランスのビザが必要なケースとは?
フランスへの渡航では、滞在期間と活動内容によってビザの要否が決まります。日本を含む一部の国の国民は、観光や出張などの目的で最大90日間までビザなしで滞在できますが、それ以上の滞在や報酬を得る活動を行う場合は、該当ビザの取得が必要です。
ビザが不要なケース(短期滞在)
以下の条件に該当する場合、ビザの取得は基本的に不要です。
- 観光・親族訪問・出張・展示会参加などが目的
- 滞在期間が90日以内
- 日本などのビザ免除対象国の国籍
- フランス国内での就労・報酬を伴う活動は不可(商談や会議参加などは可)
ビザが必要なケース
次のようなケースでは、事前に該当するビザを取得する必要があります。
- 91日以上の滞在
- フランスでの雇用契約に基づく就労
- 起業・自営業・フリーランス活動
- 大学・専門学校・語学学校への長期留学
- 家族の帯同・呼び寄せ(配偶者・子ども)
- 長期的にフランスに住むことを目的とする場合(永住・市民権取得など)
必要なビザの種類や申請方法は、滞在目的・期間・身分・国籍によって異なります。フランス移住を検討する際は、早い段階で自分に合ったビザの情報収集と準備を進めましょう。公的なフランス大使館や領事館の情報もあわせて参照することをおすすめします。
フランスの主なビザの種類と特徴
フランスには、滞在目的や活動内容に応じた多様なビザ制度が整備されています。以下は、代表的な長期滞在向けビザとその概要です。
タレント・パスポート(Passeport Talent)
対象者:高スキル人材(高度専門職、研究者、起業家、アーティストなど)
- 有効期間:最大4年(更新可能)
- 主な条件:
- フランス企業との雇用契約、または起業計画の提示
- 専門性のある分野での活動であること
- 年収要件あり(例:雇用型の場合は年収がフランスの平均給与の1.5倍以上)
- 申請費用:€225(種類により異なる)
就労ビザ(Visa de travail)
対象者:フランス国内での雇用契約に基づき働く外国人
- 有効期間:雇用契約の期間に応じて設定(更新可)
- 主な条件:
- フランスの雇用主との正式な労働契約
- フランスの労働局(DIRECCTE)の認可が必要な場合あり
- 申請費用:€99(大使館申請時)
自営業・フリーランスビザ(Profession libérale / Entrepreneur)
対象者:フランスで起業・自営業・フリーランスとして活動する人
- 有効期間:原則1年、更新可能(状況により長期滞在許可に切替可)
- 主な条件:
- 事業計画書の提出
- 活動がフランス経済に有益と認められること
- 必要資金と収入見込みの証明
- 対象例:コンサルタント、ITエンジニア、クリエイター、通訳など
学生ビザ(Visa étudiant)
対象者:フランスの大学や教育機関への正規入学者
- 有効期間:学習期間に応じて最大1年(更新可能)
- 主な条件:
- 入学許可証(Lettre d’admission)の提示
- 月額約€615以上の資金証明
- 学生向け医療保険の加入
- 申請費用:€99
家族再会ビザ(Regroupement familial / Vie privée et familiale)
対象者:フランスに合法滞在中の家族と合流する外国人
- 有効期間:1〜4年(滞在資格に応じて更新)
- 主な条件:
- 配偶者や子どもとの家族関係証明(結婚証明・出生証明など)
- 受け入れ側に安定した収入・住居があること
- 一部ケースでフランス語A1レベルの証明が求められることも
求職ビザ(Visa recherche d’emploi / création d’entreprise)
対象者:フランスの高等教育機関卒業者などで、就職または起業を目指す人
- 有効期間:最大1年
- 主な条件:
- 修士号以上の取得(フランスの学位)
- 就職活動・または起業準備を目的とする明確な計画
- 備考:就職決定後に「タレント・パスポート」などへ切替が必要
補足:その他の代表的なビザ
ビザ名 | 対象者 | 備考 |
---|---|---|
観光ビザ(Visa de court séjour) | 観光・短期出張・親族訪問など | 最大90日間の滞在(シェンゲン圏共通)、就労不可 |
オーペアビザ(Visa au pair) | ホストファミリーと生活しながら語学を学ぶ若者 | 18〜30歳が対象、就労制限あり、A1レベルの仏語力が望ましい |
ボランティアビザ(Visa de volontariat) | 公認団体を通じた欧州または国際的ボランティア活動参加者 | 滞在中は支援金・保険付きのプログラムに参加 |
研究者ビザ(Visa chercheur) | 研究機関との契約に基づき研究活動を行う人 | 長期滞在可、配偶者の帯同や後の永住申請も可能 |
フランスビザ申請に必要な書類とは?
フランスのビザ申請では、ビザの種類や個別の条件によって必要書類が異なりますが、多くのケースで共通する基本書類があります。以下に、共通提出書類と目的別の追加書類を整理しました。
一般的に必要な書類(共通書類)
書類名 | 内容・補足 |
---|---|
ビザ申請フォーム | フランス大使館または外務省の公式サイトから取得。オンライン入力後、印刷・署名して提出。 |
有効なパスポート | 発行から10年以内かつ、滞在終了日から3か月以上の有効期限が必要。見開き2ページ以上の空白欄が必要。 |
証明写真 | サイズ:35mm × 45mm。背景は白か薄い色。直近6か月以内に撮影。顔が明瞭に写っていること。 |
滞在先の証明 | ホテル予約、賃貸契約、フランス国内のホストからの招待状など。 |
資金証明 | 銀行残高証明(過去3か月分)、または収入証明書など。フランス滞在中の生活費・宿泊費を賄えることが前提。 |
医療保険加入証明 | フランスまたはEUで有効な医療保険の加入証明。保険契約書と補償内容の記載が必要。 |
住民登録予定証明(必要な場合) | 長期滞在ビザの一部では、フランス到着後の「OFII手続き(移民局登録)」を予定している旨を示す書類が求められることがあります。 |
ビザの種類別に必要な追加書類
就労ビザ(Visa de travail / Passeport Talent)
- 雇用契約書(Contrat de travail)
- フランスの労働局(DREETS)の許可(必要な場合)
- 学歴証明(卒業証書・資格証など)
- 職種・給与水準に応じた年収証明
- 履歴書(CV)や推薦状など(必要に応じて)
学生ビザ(Visa étudiant)
- 入学許可書(Lettre d’admission)
- 滞在中の資金証明(月額約€615以上が目安)
- 語学能力証明(DELF/DALF、TOEFL等)※コースによる
- 学習計画書(語学留学などの場合)
- 学生用医療保険の加入証明
自営業・フリーランスビザ(Profession libérale / Entrepreneur)
- 事業計画書(Plan d’affaires)
- 活動内容の詳細・収益見込み・市場調査
- 関連する職種の資格証明(必要に応じて)
- 顧客との契約・見積書・推薦状など
- フランス国内の拠点の証明(賃貸契約など)
家族再会ビザ(Regroupement familial / Vie privée et familiale)
- 家族関係証明(結婚証明書・出生証明書など)
- フランス在住家族の滞在許可証のコピー
- フランス滞在者の収入証明・住居証明(十分なスペースがあること)
- 配偶者がフランス語A1レベルを証明する書類(必要な場合)
注意点
- 在日フランス大使館 公式情報ページ
https://jp.ambafrance.org/
最新の必要書類は、必ずこちらで確認してください。 - 提出書類の言語
基本的にフランス語または英語での提出が必要です。その他言語の場合は、認定翻訳者による翻訳文の添付が求められます。 - 原本とコピー
原則として、全ての書類は原本とそのコピーを併せて提出する必要があります。 - 審査状況に応じた追加提出
ビザの審査中に追加書類を求められる場合があります。余裕を持って準備を進めましょう。
フランスビザ申請の流れ|ステップ別にわかりやすく解説
フランスのビザ申請は、書類準備から大使館での面接、審査・発給まで複数のステップを踏む必要があります。ここでは、日本在住者が長期滞在ビザ(就労・学生・家族再会など)を申請する際の一般的な流れと、代表的な費用、取得後の注意点をまとめました。
STEP1:必要書類の準備
ビザの種類により必要書類は異なりますが、以下の共通書類が多くのケースで求められます。
一般的な必要書類(共通)
- ビザ申請フォーム(オンライン入力またはPDF記入→印刷)
- 有効なパスポート(申請時点で有効期限が3か月以上、見開き2ページ以上の空白)
- 証明写真(35mm×45mm、白背景、直近6か月以内に撮影)
- 滞在先の証明(賃貸契約、ホテル予約、滞在先からの招待状など)
- 資金証明(銀行残高証明、就労証明、奨学金証明など)
- 医療保険の加入証明(公的または民間、種類により条件が異なる)
ビザの種類別 追加書類
ビザの種類 | 追加書類の例 |
---|---|
就労ビザ(Visa de travail / Passeport Talent) | 雇用契約書、DREETS認可、学歴証明、給与明細など |
学生ビザ(Visa étudiant) | 入学許可書、資金証明(最低月額€615目安)、語学力証明 |
家族再会ビザ(Regroupement familial) | 結婚・出生証明書、扶養者の在留カードコピー、収入・住居証明 |
自営業・フリーランスビザ(Profession libérale) | 事業計画書、顧客との契約書、資格証明、収支予測 |
提出言語は原則としてフランス語または英語。その他言語は公認翻訳の添付が必要です。
大使館のオンライン予約
- 在日フランス大使館のビザ申請ページからオンライン予約を行います。
https://jp.ambafrance.org/ - ビザ申請枠は混雑するため、渡航予定の2〜3か月前には予約を取るのが安心です。
- 予約後は、面接日までにすべての書類を揃えておくことが必要です。
ビザ申請面接・書類提出
- 面接は在日フランス大使館(東京)で実施されます。
- 書類確認、質疑応答(滞在目的、資金源、渡航計画など)があります。
- 書類は原本+コピーで提出します。原本はその場で返却されるケースが多いです。
審査・パスポート返却
- 標準審査期間:2〜6週間程度(ビザの種類や時期により異なる)
- 発給後、ビザステッカーが貼られたパスポートが返送されます。
- 郵送返却希望の場合はレターパック等の同封が必要です。
フランスビザ申請費用の目安(2025年時点)
ビザの種類 | 申請費用(ユーロ) | 備考 |
---|---|---|
就労・タレントパスポート | 約 €99〜€225 | 種類・年数により変動あり |
学生ビザ | €99 | 大学・語学留学いずれも同額 |
家族再会ビザ | €99 | 子どもの場合は免除または減額あり |
フリーランス・起業ビザ | €99〜€225 | 書類審査が厳格なため慎重に準備を |
※料金は変更の可能性があります。最新情報は在日フランス大使館公式サイトをご確認ください。
ビザ取得後の注意点
- 滞在許可証(Carte de séjour)の申請
→ フランス到着後、OFII(フランス移民局)手続きにより正式な滞在許可証を取得。 - 住民登録(Déclaration de domicile)
→ 入国後3か月以内に滞在地の市役所で登録が必要な場合があります。 - 社会保険・納税登録の整備
→ 雇用・保険・居住状況の変更があれば速やかに届け出を。滞在許可に影響する可能性があります。
フランスのビザ申請は一見シンプルに見えても、種類ごとに異なる条件や例外、必要書類の細かな違いがあります。不備や遅延を防ぐためにも、大使館公式情報を常に確認しながら、早めの準備を進めることが重要です。
フランス国籍を取得する方法(市民権取得ガイド)
フランスに長期滞在している方の中には、将来的に「フランス国籍(nationalité française)」の取得を検討する方も多いでしょう。本記事では、主な取得ルートとその要件について分かりやすく解説します。
1. 帰化による取得(Naturalisation par décret)
最も一般的な方法は、一定期間フランスに合法的に滞在したうえでの帰化申請です。
主な要件(2025年時点)
- 通常5年以上連続してフランスに合法的に居住
※フランスの大学を修了した人などは2年に短縮可 - 安定した収入と生活基盤(社会保障への依存がないこと)
- 犯罪歴がないこと(重大な違反は不可)
- フランス語B1レベル以上の語学力証明(口頭+筆記)
- フランス社会への統合が認められること(価値観の尊重・文化理解など)
- 市民権面接への出席(Préfectureまたは大使館にて)
申請手数料:€55(税金スタンプ形式)
未成年者や家族同時申請の場合は減額・免除されることもあります。
2. 結婚による取得(Naturalisation par mariage)
フランス国籍者との婚姻関係を通じて国籍取得を申請できる制度もあります。
主な要件
- 婚姻関係が4年以上継続していること
- かつ、過去3年間継続してフランス国内に居住していること
- または、フランス人配偶者が出生時からフランス国籍を保持している場合は、国外居住でも可
- 上記の語学力・収入・統合性に関する要件も同様に適用されます
フランス語力証明(B1レベル)と婚姻証明書類の提出が必要です。
婚姻の真実性が審査されるため、面接や追加調査が行われることがあります。
3. 出生または家系による取得(Nationalité par filiation / naissance en France)
出生や家系に基づくフランス国籍の取得も認められるケースがあります。
対象となる例
- フランスで出生し、親の一方が合法的に長期滞在中だった場合
- フランス人の親から国外で出生した子ども
- 過去にフランス国籍を持っていた先祖を持つ人(再取得申請)
条件や必要書類は複雑で個別対応となるため、事前に市役所や移民局、弁護士への相談が強く推奨されます。
注意点と相談先
- 申請先:県庁(Préfecture)またはフランス大使館(国外居住者の場合)
- 必要書類は個別の事情により異なるため、事前のチェックが必須です。
- 書類の不備や要件未達成により却下される例もあるため、慎重な準備が必要です。
- 二重国籍はフランスでは原則容認されていますが、日本国籍保持者は日本の法律で国籍離脱が必要になる可能性があるため注意してください。
フランス国籍取得は、単なる手続きだけでなく、フランス社会の一員としての統合が求められる重要なプロセスです。時間と労力を要する申請ですが、しっかりと準備すれば確実に前に進める制度でもあります。
まとめ|フランス国籍取得に向けたステップとポイント
- フランス国籍取得には「長期滞在」「社会統合」「経済的自立」が重視される
- 最も一般的なルートは、5年以上の滞在を経て行う「帰化申請(naturalisation)」
- 婚姻・血縁・出生など、個人の状況に応じた多様な取得ルートが存在
- 語学力(フランス語B1レベル)と市民権面接の事前対策が必須
- フランスは二重国籍を原則として容認しているが、日本国籍保持者は注意が必要
- 申請には数ヶ月以上の時間と準備費用がかかるため、早めの計画と情報収集が鍵
- 最新の法改正や必要書類については、フランス内務省(Ministère de l’Intérieur)または在日フランス大使館の公式情報を確認するのが確実です
最新情報の確認先と申請窓口について
フランスのビザ制度に関する基本情報や申請条件は、フランス外務省(Ministère de l’Europe et des Affaires étrangères)およびフランス移民局(OFII)などの関係機関によって定められています。
一方、日本から実際にビザを申請する場合は、在日フランス大使館(東京)が管轄しており、ビザ申請業務の一部は VFS Global(ビザ申請センター)に委託されています。
各ビザの最新要件や必要書類、申請フォーム、面接予約方法などは変更される可能性があるため、以下の公式サイトで最新情報を確認することが重要です。
確認内容 | 公式サイトリンク |
---|---|
在日フランス大使館(ビザ情報ページ) | https://jp.ambafrance.org/-Visas- |
VFS Global(フランスビザ申請センター 日本語) | https://visa.vfsglobal.com/jpn/ja/fra |
フランス政府公式ビザポータル(France-Visas) | https://france-visas.gouv.fr/(※日本語対応あり) |
補足:
- VFS Globalは、在日フランス大使館がビザ受付業務を委託している民間のビザ申請センターです。日本からの申請は、原則としてVFSを経由して行うことになります。
- 渡航目的や滞在期間に応じて必要書類や手続きが大きく異なるため、各リンク先で自分のケースに適した情報を事前に確認してください。


▶︎フランスの情報はこちらから