ポルトガルの教育制度– ポルトガルの学年構成・学校の種類・外国人の入学手続きから学費まで、子どもを持つ移住者に必要な教育情報を詳しく解説 –

ポルトガル移住を検討する際、子どもの教育制度がどうなっているかは重要なポイントです。
本記事では、ポルトガルの学年構成や教育費、外国人の子どもが通うための手続きなど、日本との違いも含めてわかりやすく解説します。

目次

ポルトガルの教育制度の構成

ポルトガルでは、6歳から18歳までの12年間が実質的な義務教育期間とされ、教育の大まかな流れは以下の通りです。

■ 基礎教育(Ensino Básico)|9年間(義務教育)

  • 第1サイクル(1〜4年生):6〜10歳
    読み書きや計算などの基礎的な学習。1人の教師が複数科目を担当。
  • 第2サイクル(5〜6年生):10〜12歳
    教科ごとに担当教師が分かれ、科目の幅が広がる。
  • 第3サイクル(7〜9年生):12〜15歳
    中学校に相当。科目ごとの専門性が高まり、進路を意識し始める段階。

■ 中等教育(Ensino Secundário)|3年間(15〜18歳)(義務教育)

  • 10〜12年生に該当
    大学進学を前提とした「一般教育課程(科学・人文など)」と、就職や実務スキルを重視する「職業教育課程(プロフェッショナル)」に分かれる。
    ※この段階の修了資格が大学進学や就職に直結します。

■ 高等教育(Ensino Superior)|(義務教育外)

  • 大学(Universidade)
    • 学士課程(Licenciatura):通常3年
    • 修士課程(Mestrado):1〜2年
    • 博士課程(Doutoramento):3〜4年
  • 高等専門学校(Instituto Politécnico)

ポルトガルの教育制度とは?基本概要

ポルトガルでは、6歳から18歳までの12年間が義務教育期間と定められています。教育制度は以下のように構成されています。

  • 基礎教育(Ensino Básico):9年間
    • 第1サイクル(1〜4年生):6歳〜10歳
    • 第2サイクル(5〜6年生):10歳〜12歳
    • 第3サイクル(7〜9年生):12歳〜15歳
  • 中等教育(Ensino Secundário):3年間
    • 10〜12年生:15歳〜18歳

ポルトガルの学年・年齢別の教育システム

ポルトガルの教育制度は、日本とは異なる学年区分と名称で構成されています。以下に各段階の詳細をまとめます。

幼児教育(Educação Pré-Escolar)

  • 対象年齢:3〜5歳(義務教育ではない)
  • 特徴:幼稚園(Jardim de Infância)で行われ、社会性や基本的な生活習慣を学ぶ場となります。

基礎教育(Ensino Básico)

  • 第1サイクル
    • 対象年齢:6〜10歳(1〜4年生)
    • 特徴:主に1人の教師が全科目を担当し、読み書きや算数などの基礎学力を養います。
  • 第2サイクル
    • 対象年齢:10〜12歳(5〜6年生)
    • 特徴:複数の教師が専門科目を教えるようになり、科目数も増加します。
  • 第3サイクル
    • 対象年齢:12〜15歳(7〜9年生)
    • 特徴:中学校に相当し、より専門的な科目が導入されます。

中等教育(Ensino Secundário)

  • 対象年齢:15〜18歳(10〜12年生)
  • 特徴:大学進学を目指す「科学・人文系コース」や、職業訓練を目的とした「専門芸術学校」「職業学校」など、多様な進路が選択可能です。

高等教育(Ensino Superior)|ポルトガルの大学制度

高等教育機関の種類

ポルトガルの高等教育機関は、主に以下の2つに分類されます。

種類説明特徴
Universidade(大学)学術・研究を重視する高等教育機関理論研究、専門職志向(法学・医学・工学など)に強い
Instituto Politécnico(高等専門学校)実務的・職業的な教育に特化した機関就職直結の専門スキル教育、職業訓練系に強い

どちらも学位授与が可能ですが、大学のほうが研究・修士・博士課程の充実度が高い傾向があります。

Universidade(大学)| 学位の種類と概要

ポルトガルの大学制度は、ボローニャ・プロセスに基づき、以下の3段階で構成されています。

学士課程(Licenciatura

  • 対象:中等教育(12年生)修了者
  • 入学方法:全国統一試験(Exames Nacionais)+希望大学の出願選考
  • 期間:通常3年間(180 ECTS)
  • 特徴:大学・高等専門学校どちらでも履修可能。学問的基礎や職業スキルを習得
  • 修了後:修士課程(Mestrado)への進学、または就職へ

修士課程(Mestrado

  • 対象:学士号取得者
  • 期間:1〜2年(90〜120 ECTS)
  • 特徴
    • 学問的専門性を深める
    • 建築・心理・教育分野などは、国家資格取得に直結することもあり
  • 修了後:博士課程、または専門職就業へ

博士課程(Doutoramento

  • 対象:修士号取得者
  • 期間:3〜4年間(研究+博士論文)
  • 特徴:独自研究テーマに基づく博士論文の執筆・公開審査を経て学位取得
  • 進路:大学・研究機関でのアカデミックキャリア、または高度専門職

留学生の受け入れと国際教育

ポルトガルはEU域内外からの留学生受け入れに積極的で、次のような特徴があります:

  • 英語で学べる学士・修士プログラムが年々拡大(特にビジネス、工学、観光など)
  • 欧州の中では学費が比較的安価
  • 滞在許可・学生ビザの取得も比較的容易

主な国際的評価の高い大学:

  • リスボン大学(Universidade de Lisboa)
  • ポルト大学(Universidade do Porto)
  • コインブラ大学(Universidade de Coimbra)

特にコインブラ大学は1290年創立の伝統校で、欧州各国からの留学生に人気があります。

Instituto Politécnico(高等専門学校)

Instituto Politécnico(インスティトゥート・ポリテクニコ)は、ポルトガルにおける高等教育機関の一形態で、実践的で職業的な教育に特化した「応用型の大学」といえます。

対象者・入学資格

  • 原則として中等教育(12年生)修了者
  • 学士課程(Licenciatura)から入学可能
  • 一部では職業訓練課程(Curso Técnico Superior Profissional)も提供

特徴と教育内容

特徴内容
実務志向工学・看護・観光・経営・教育など、就職に直結する分野が中心。
教育スタイル座学に加えて実習やインターンシップ(Estágios)を重視。
地域密着型地方都市にも多数設置されており、地域社会と連携した実践教育が盛ん。
柔軟な進学ルート学士課程→修士課程→博士課程への進学が可能(大学と同等の学位授与資格あり)。

学科の例(学校により異なる)

  • 工学系:情報工学、機械工学、電気工学
  • 医療系:看護学、理学療法、臨床検査技術
  • 観光・ホスピタリティ:観光経営、レストラン・ホテルマネジメント
  • 教育系:初等教育、幼児教育
  • アート・デザイン:ビジュアルデザイン、コミュニケーション

修了後の進路

  • そのまま職業現場へ就職
  • 成績により修士課程(Mestrado)への進学も可能
  • 一部の分野では国家試験資格や上級職資格へのルートとしても機能

代表的なInstituto Politécnico(例)

  • Instituto Politécnico de Lisboa(リスボン高等専門学校)
  • Instituto Politécnico do Porto(ポルト高等専門学校)
  • Instituto Politécnico de Coimbra(コインブラ高等専門学校)

日本の高専や専門学校との違い

項目Instituto Politécnico(ポルトガル)日本の専門学校・高専
学位授与学士・修士まで可能原則として専門士・高度専門士のみ
教育期間3年(学士課程)〜2〜5年(専門士・高専)
国際性EU基準のボローニャ体制主に国内制度
修了後の進学修士・博士へ進学可能編入は可能だが制限あり

補足: Instituto Politécnico は、アカデミックな大学と実務志向の職業学校の中間的な存在とも言えます。現地就職や国際展開を視野に入れる方にとって、バランスの良い進学先となっています。

学校の種類と入学手続き|ポルトガルの教育制度

ポルトガルには、公立校(Escola Pública)私立校(Escola Privada)、そしてその中間に位置する協定校(Escola com Contrato de Associação)があります。

学校の種類によって入学条件・費用・教育スタイルが異なるため、子どもの年齢や家庭の教育方針に応じて適切に選ぶことが大切です。

公立校の特徴と申込方法

  • 授業料は無料(教材費や給食費などは実費負担)
  • 学区制(Área de residência)が基本で、住民登録証明(Atestado de Residência)が必要
  • 入学申請は春(4〜5月)に行い、9月に新学年がスタート
  • 教育の言語は原則としてポルトガル語
  • 幼児教育(3歳〜5歳)から受け入れ可能な学校も多い

申請に必要な主な書類

  • 子どもの出生証明書またはパスポート
  • 保護者の身分証明書
  • 住所証明(住民登録証明など)
  • 健康保険番号・ワクチン接種証明(Boletim de Vacinas)

私立・インターナショナルスクールの特徴

  • 授業は英語・フランス語・ドイツ語など、多言語で行われる
  • 日本人家庭向けの対応やサポート体制が整った学校もあり
  • 年間学費は約5,000〜15,000ユーロ程度(学校によって大きく異なる)
  • 願書・成績証明・面接・動機書などの提出が求められるケースも

入学スケジュール

  • 申込:毎年春ごろ(2〜5月)
  • 結果通知:初夏〜7月
  • 入学開始:9月(ポルトガルは9月始業)

ポルトガル移住者の子どもの教育事情

外国人の子どもでも通える?

  • ポルトガルでは、公立校も外国人児童の受け入れに積極的です
  • 保護者が居住許可を持っており、子どもがポルトガルに居住していれば入学可能
  • NIEにあたる「NIF(納税者番号)」や居住証明書が求められることがあります

言葉の壁とサポート体制

  • 初年度は、ポルトガル語がわからない子ども向けに「適応支援クラス(Turmas de Acolhimento)」が用意されることがあります
  • 教員による言語支援プログラムもあり、徐々に通常授業に合流する形式
  • 保護者との連絡は基本ポルトガル語。必要に応じて翻訳アプリやサポート者の協力が必要です

日本語教育の補完

ポルトガルには正式な全日制日本人学校はないものの、以下の方法で補完が可能です。

  • 一時帰国時に補習校へ通う
  • オンライン日本語塾や家庭教師
  • 国語教材の個人持参学習

教育費と学費の目安|ポルトガルの教育制度

ポルトガルでは、公立校の教育費は非常に低く抑えられており、家計への負担は比較的軽いのが特徴です。一方で、私立校やインターナショナルスクールは、学校の方針や設備により大きく費用が異なります。

教育段階別|年間学費の目安(目安)

教育段階公立校私立校(一般)インターナショナルスクール
幼児教育無料(教材費等は一部負担)〜5,000€/年〜15,000€/年
初等〜中等教育教材費・給食費のみ3,000〜7,000€/年10,000〜20,000€/年
高等教育(高校)同上同上同上
大学(州立)500〜1,500€/年(授業料)高額な私立もあり英語プログラムは高め

教育費は地域、学校の方針、授業言語などにより異なります。

その他の費用

  • 教材費:年間200〜500ユーロ程度(学年・学校により変動)
  • 課外活動費:月30〜100ユーロ(スポーツ・音楽・美術など)
  • ランチ代:1食3〜5ユーロ(外部委託や給食サービスの場合)

ポルトガルと日本の教育の違い(比較表)

比較項目ポルトガル日本
評価制度定期試験+観察評価(参加姿勢なども含む)試験中心の成績評価
制服基本なし多くの学校で制服あり
保護者の関与比較的自由(PTA的な役割は限定的)PTAや行事参加が求められることも多い
留年制度一定の学力に満たない場合は留年あり基本的に進級が優先される
部活動なし(クラブ活動は課外で選択制)学校主催の部活が多く、種類も豊富

日本人家庭の子どもが通う主な学校タイプ(ポルトガル版)

ポルトガル在住の日本人家庭が選ぶ主な学校タイプは以下のとおりです。
家庭の教育方針(日本の教育を維持したい/現地適応を重視したい/英語教育に力を入れたい)に応じて、選択肢が異なります。

① 日本人学校(全日制)

  • 対象者:駐在員家庭など、日本の教育をそのまま継続したい家庭向け
  • 場所:リスボン日本人学校(リスボンに1校)
  • カリキュラム:日本の文部科学省認定カリキュラム。教科書も日本と同じ
  • 言語:授業はすべて日本語
  • メリット:帰国後の編入がスムーズ。日本式の生活指導あり
  • デメリット:現地社会やポルトガル語との接点が少なくなりやすい

② 公立校(Escola Pública)

  • 対象者:現地社会に溶け込みたい家庭、長期移住者
  • 費用:授業料無料。教材・給食費などの実費のみ
  • 言語:授業はポルトガル語
  • 特徴:現地の子どもたちと一緒に学ぶ。ポルトガル語支援クラス(PT)を設ける学校もある
  • 注意点:親の語学力も必要。学校との連絡はポルトガル語が基本

③ セミプライベート校(Escola com Contrato de Associação)

  • 特徴:政府からの助成金を受けて運営されている私立校。授業料は抑えめ
  • 人気:地元住民にも支持されており、日本人家庭でも選ばれるケースが多い
  • 教育レベル:学校によって差はあるが、一般的に教育水準や管理体制が安定している

④ インターナショナルスクール

  • 対象者:英語教育を希望する家庭。将来の海外進学を視野に入れた家庭
  • 言語:授業は主に英語。ポルトガル語の授業も必修
  • カリキュラム:IB(国際バカロレア)、英国式、米国式など多様な教育課程を提供
  • 費用:年間10,000〜20,000ユーロ程度と高額
  • その他:英語環境を求める欧米系家庭や富裕層の子どもも多く通学

補足:補習授業校という選択肢も

リスボンやポルトなどには、文部科学省認定の補習授業校も存在します。
現地校に通いながら、週1回日本語で国語・算数などを学ぶ形式で、日本語力を維持したい家庭に人気があります。オンラインでの補習授業や教材サポートを利用する家庭も増えています。

よくある質問(FAQ)|ポルトガル教育編

日本の成績や卒業証明書は使える?

一部の学校やインター校では必要書類として求められることがあります。翻訳(ポルトガル語または英語)+認証が必要な場合もあるため、早めの確認をおすすめします。

帰国後、日本の学校に編入できる?

義務教育段階では、教育委員会との調整が必要です。特に中学・高校は年齢や学力に応じて対応が異なるため、帰国前に進学予定校との連絡を取っておくとスムーズです。

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