ポルトガルへの移住を考える際、住居・ビザ・仕事などと並んで重要なのが「お金」に関する準備です。
税金の仕組みや現地銀行口座の開設、日本との送金方法を理解していないと、予期せぬコストやトラブルに繋がることもあります。
この記事では、移住者が直面しやすい「お金」に関する基礎知識を一通りご紹介し、それぞれのテーマに特化した解説記事にもリンクを用意しています。
ポルトガルで安心して生活を始めるためのファーストステップとして、ぜひ最後までご覧ください。
ポルトガルの税制|居住者税・非居住者税・二重課税・確定申告の基本
ポルトガルの所得税は、まずその人が「居住者(residente fiscal)」か「非居住者(não residente)」かによって課税方法が異なります。
居住者とみなされる条件
以下のいずれかに該当する場合、ポルトガルの税務上の居住者と判断されます。
- 1年間に183日以上ポルトガルに滞在している
- 滞在期間が183日未満でも、ポルトガルに主たる住居を持ち、実際に生活の拠点としている
- 主たる経済的利益(収入・資産管理など)がポルトガルにある
居住者とみなされた場合、全世界所得が課税対象となります。つまり、日本の給与収入や不動産収入、副業の利益なども申告が必要になります。
非居住者とは?
ポルトガルに183日未満の滞在で、かつ生活・経済拠点が国外にある場合、「非居住者」として扱われます。
非居住者の場合は、ポルトガル国内で得た所得のみに課税されます。たとえば、ポルトガル国内の不動産賃貸収入などが該当します。非居住者の課税率は所得の種類によって異なりますが、一般的に25%前後の固定税率が適用されます。
二重課税防止条約(日本との関係)
ポルトガルと日本は二重課税防止条約を締結しており、同じ所得に対して日本とポルトガルの両方で税金が課されるのを防ぐことができます。
たとえば、日本で源泉徴収された給与や報酬をポルトガルで申告する際、外国税額控除制度を利用することで、日本で納めた税額を差し引くことが可能です。
ただし、この制度を適用するには、所定の書類の準備や提出が必須です。実際の申告は、ポルトガルに詳しい会計士と相談しながら進めるのが安心です。
銀行口座の開設方法|NIF取得後の手続きとおすすめ銀行
ポルトガルで家を借りたり、生活費を管理したり、日本からの送金を受け取るためにも、現地の銀行口座はほぼ必須です。
一方で、外国人が口座を開設するには通常、NIF(納税者番号)の取得が必要であり、銀行によって求められる条件や対応も異なります。
ポルトガルの銀行口座を開設するには
外国人が銀行口座を開設するには、NIF(Número de Identificação Fiscal)=納税者番号の取得が基本となります。
また、以下の書類も多くの銀行で求められます:
- パスポート(またはEU居住者の場合はIDカード)
- NIF証明書(税務署で発行)
- ポルトガル国内の住所証明(賃貸契約書や公共料金の請求書など)
- 雇用証明または収入証明(銀行による)
非居住者でも作れる口座はある?
非居住者向けの口座(Conta para não residentes)を提供している銀行もあります。
ただし、多くの場合、追加の手数料がかかったり、利用できるサービスが制限されたりするため、将来的に居住者となる予定であれば、居住者用口座を開設するほうが実用的です。
主な銀行の特徴
銀行名 | 特徴 | 外国人対応 |
---|---|---|
Millennium BCP | 英語対応が比較的しっかりしている。アプリも使いやすい | 一部支店で英語対応あり |
Caixa Geral de Depósitos(CGD) | 国営銀行で安心感あり。手数料が安め | 手続きに時間がかかることも |
Novo Banco | 外国人対応プランあり。非居住者口座にも柔軟 | 支店によって対応が異なる |
口座維持手数料の目安
ポルトガルでは、月額3〜7ユーロ程度の口座維持手数料がかかるのが一般的です。
ただし、年齢や収入、利用状況によって免除されることもあります。各銀行の条件を事前に確認しておきましょう。
オンラインバンクという選択肢
対面での手続きが難しい場合や短期滞在の場合には、オンライン銀行も人気です。特に以下のサービスは移住者にも好評です:
- Revolut:ユーロ口座として利用可能。多通貨対応で送金もスムーズ
- Wise(旧TransferWise):国際送金に強い。日本の銀行口座との連携も可
- N26:ドイツ発のオンラインバンクで、シンプルなUIと手数料の安さが魅力

補足:言語の壁に備えて
銀行員が英語を話せるとは限らないため、ポルトガル語での基本的なやりとりを事前にメモしておくと安心です。特に予約や本人確認、必要書類に関する表現は確認しておきましょう。
海外送金の方法
日本の口座からポルトガルへ送金する場合、またはポルトガルから日本の口座に送金する場合、銀行手数料や為替レートの差によって大きなコストが発生することがあります。
最近では、従来の銀行経由よりもコストを抑えられるフィンテック系の送金サービスを利用する人が増えています。
代表的なサービス
- Wise(旧TransferWise)
実際の為替レートに近いレートで送金でき、手数料も明確。日本からポルトガルへの送金にも対応しています。 - Revolut
多通貨アカウントを保有できるサービスで、ユーロと円の両方で資金管理が可能。送金スピードも速く、アプリが使いやすい点も魅力です。 - N26
ドイツ発のオンラインバンクで、ユーロ圏内の取引に便利。日本の口座と直接の接続はありませんが、RevolutやWiseと連携することで送金がスムーズになります。

ポルトガルに長期滞在・移住を予定している方は、こうした低コストかつスピーディな送金手段を事前に把握しておくと安心です。
銀行経由での送金も可能ですが、SWIFTコードの入力や中継手数料が発生するケースが多く、特に少額送金には向いていません。
目的(家賃支払い・仕送り・投資など)に応じて、最適な手段を選びましょう。
