ポルトガルは、温暖な気候、美しい街並み、そして高い生活の質から、ヨーロッパでも特に移住希望者に人気の国です。リタイアメント層からデジタルノマド、起業家まで、世界中から多くの人がこの国を選んでいます。
本記事では、ポルトガルのビザ制度について、種類・申請手続き・必要書類・永住権や市民権取得までを網羅的に解説します。
ポルトガルのビザが必要なケースとは?
ポルトガルはシェンゲン協定加盟国であり、多くの国の市民は180日間のうち90日以内の滞在であればビザ不要です。ただし、それを超える長期滞在や就労を希望する場合には、事前にビザを取得する必要があります。
ビザ不要のケース(短期滞在)
- 観光・ビジネス・親族訪問など、90日以内の滞在(日本国籍者を含む多くの国はビザ不要)
ビザが必要なケース
- 90日を超える滞在(学生・就労・移住など)
- リモートワークでの長期滞在
- 現地での起業・自営業
- 家族との同居を目的とする滞在
ポルトガルの主なビザの種類
ポルトガルは、目的別にさまざまな長期ビザを提供しています。以下は代表的なものです。
D7ビザ(非労働所得者向け)
- 対象者:年金・不労所得・家賃収入・投資収入などで生活できる人
- 有効期間:初回1年 → 更新時2年 → 永住権
- 費用:€90前後
- 資金要件:単身で月€760以上、家族が増えるごとに加算
- 特徴:就労不可だが、居住許可や社会保障番号が取得できる
- 人気層:リタイアメント層、資産収入のある人
D8ビザ(デジタルノマドビザ)
- 対象者:海外企業に雇用されており、リモートでポルトガルに滞在したい人
- 有効期間:初回1年(更新可能)
- 収入条件:月€3,280以上(最低賃金の4倍)
- 必要書類:雇用契約書、リモートワーク証明、収入証明など
- 特徴:フリーランスやリモートワーカーに人気
スタートアップビザ(起業家向け)
- 対象者:革新的ビジネスを立ち上げたい外国人起業家
- 有効期間:1年間(更新可能)
- 審査機関:IAPMEI(ポルトガル投資促進機関)の認定が必要
- 要件:ビジネスプラン、最低資本、経済・雇用への貢献
- 特徴:EU市場への足がかりとして注目されている
就労ビザ(企業雇用・ブルーカード)
- 対象者:ポルトガル企業との雇用契約がある人、高度技能職
- 有効期間:1〜2年(更新可能)
- ブルーカード要件:高等教育の学位、年収€1,200/月以上など
- 特徴:医療・IT・エンジニアリングなどの専門職にニーズあり
自営業ビザ(フリーランス)
- 対象者:ポルトガル国内で個人事業を展開する人
- 有効期間:初回1年 → 更新2年
- 必要書類:業務計画、ポルトガル国内の顧客・契約書など
- 特徴:自由度は高いが審査も厳しめ
家族滞在ビザ(Family Reunification)
- 対象者:配偶者・子ども・親など、ポルトガル在住者との同居を希望する家族
- 要件:関係性を証明する書類、居住者側の滞在資格・収入証明など
ポルトガルビザの必要書類
申請するビザの種類によって異なりますが、以下は共通して必要となる代表的な書類です。
- ビザ申請書(オンラインまたはPDFで記入)
- 有効なパスポート(申請時点で残存有効期限が6か月以上)
- 最新の証明写真(背景白、規定サイズ)
- 滞在先の証明(賃貸契約書、招待状など)
- 医療保険加入証明(D7ビザなどでは必須)
- 経済的自立を証明する書類(銀行残高証明・収入証明など)
- 犯罪歴証明書(出身国の警察署より取得)
- ポルトガル語または英語翻訳が必要な場合あり
ポルトガルの永住権(Residência Permanente)
ポルトガルに長期滞在し、「今後もこの国で安定的に暮らしたい」と考える方にとって、永住権の取得は非常に重要なステップです。永住権(Residência Permanente)を取得すると、ビザの更新義務が大幅に軽減され、労働や滞在の自由度が広がります。
永住権取得条件
- 5年以上の連続居住(就労・D7・家族再統合など)
- 犯罪歴がないこと
- ポルトガル語の基本的な理解(A2レベルが目安)
- 税金・社会保障の支払い履歴が良好
永住申請プロセス
- 必要書類の準備
- SEF(外国人移民庁)にて申請
- 指紋登録などの手続き
- 数週間〜数ヶ月で永住カードが発行
ポルトガル国籍取得(市民権)
永住権を取得して長くポルトガルに住んでいる方や、ポルトガルとの強いつながりがある方にとって、市民権(ポルトガル国籍)の取得は次なるステップとなります。国籍を取得すると、選挙権を含むすべての市民権利が与えられるほか、EU市民としての自由な移動・就労の権利も得られるため、将来的な選択肢が大きく広がります。
主な取得ルート
- 通常帰化
- ポルトガルで10年以上合法的に居住
- ポルトガル語能力(A2レベル)と市民試験(基本的な歴史・制度)合格
- 犯罪歴がないこと
- 結婚による国籍取得
- ポルトガル国民と3年以上婚姻関係にあり、共同生活を証明できる
- 血縁による申請
- ポルトガル人の親・祖父母・曾祖父母を持つ場合、簡易帰化が可能
最新情報の確認先と申請窓口について
ポルトガルのビザ制度に関する基本情報や申請条件は、ポルトガル政府・移民庁(旧SEF、現在はAIMA)や外務省によって定められています。
一方、日本からの実際の申請手続きは、ポルトガル大使館の委託を受けた VFS Global(ビザ申請センター)を通じて行います。
各制度の要件や申請フォーム、必要書類などは変更される可能性があるため、最新情報は必ず以下の公式サイトで確認してください。
確認内容 | 公式サイトリンク |
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ポルトガル大使館(東京) | https://www.toquio.embaixadaportugal.mne.gov.pt/ja/ |
VFS Global(ビザ申請センター 日本語) | https://visa.vfsglobal.com/jpn/ja/prt/ |
ポルトガル移民庁(AIMA) | https://aima.gov.pt(※ポルトガル語・英語) |
補足:
VFS Globalは、ポルトガル大使館がビザ受付業務を委託している民間企業であり、現在日本からのビザ申請はVFS経由で行うのが原則となっています。
まとめ
- ポルトガルは目的に応じた多様な長期ビザ制度を整備しており、リタイアメント、リモートワーク、起業など幅広く対応しています。
- 永住権・市民権のルートも明確で、将来的にヨーロッパ全体での活動も視野に入れられます。
- 最新の情報は必ずポルトガル大使館・SEF(外国人移民庁)の公式サイトで確認しましょう。