スペイン移住を検討する際、子どもの教育制度がどうなっているかは重要なポイントです。
本記事では、スペインの学年構成や教育費、外国人の子どもが通うための手続きなど、日本との違いも含めてわかりやすく解説します。
スペインの教育制度とは?基本概要
スペインでは、6歳から16歳までの10年間が義務教育期間となっています。教育の提供は各自治州に大きな裁量があり、地域によって若干の違いがありますが、基本的な枠組みは全国共通です。
教育制度のポイント
- 義務教育期間:6歳〜16歳(初等+中等教育)
- 公立校・私立校・セミプライベート校(コンサートゥアード)が存在
- 授業は主にスペイン語(州によってはカタルーニャ語・バスク語など)
スペインの学年・年齢別の教育システム
スペインの教育制度は、日本とは異なる学年区分と名称で構成されています。0歳からの幼児教育から始まり、義務教育期間である初等教育(Primaria)と中等教育(ESO)を経て、高等教育へと進みます。
幼児教育(Educación Infantil)
- 対象年齢:0〜6歳(義務ではない)
- 2歳以下:保育園(Guardería)
- 3〜6歳:幼稚園(Escuela Infantil)
※公立でも3歳以上は無料で受け入れる学校が多い。
初等教育(Educación Primaria)
- 対象年齢:6〜12歳(6年間)
- 学年:1年生〜6年生(Cicloと呼ばれる2年ごとの区分あり)
- 通常は1クラス20〜25人程度
中等教育(Educación Secundaria Obligatoria:ESO)
- 対象年齢:12〜16歳(4年間)
- 学年:1年生〜4年生(ESO1〜ESO4)
- 成績により留年あり
バカロレア(Bachillerato)と職業訓練(FP)
- バカロレア(文系・理系などに分かれる)
- 職業訓練(Formación Profesional:実践的なスキルを学ぶ)
- 対象年齢:16〜18歳
大学教育(Educación Universitaria)
- 学士課程(Grado):通常4年間
- 修士課程(Máster):1〜2年
- 博士課程(Doctorado):3〜5年
日本でいう高校:バカロレア(Bachillerato)と職業訓練(FP)
初等・中等教育(義務教育)を終えた16歳以降の進路は、大きく分けて「大学進学を見据えたバカロレア(Bachillerato)」と、「実践的スキルを身につける職業訓練(Formación Profesional:FP)」の2つに分かれます。
一部の総合教育センター(公立IESなど)では、バカロレアとFPの両方の課程を併設していることもありますが、一般的には別の教育機関で行われます。そのため、中等教育(Educación Secundaria Obligatoria:ESO)の段階でどちらに進むのか選択する必要があります。
バカロレア(Bachillerato)
- 対象年齢:16〜18歳(2年間)
- 主に大学進学を目的としたアカデミックな教育課程
- 文系(人文学・社会科学)/理系(科学技術・自然科学)など、専攻によって科目が分かれる
- 修了後は大学入学試験(EBAU/Selectividad)を受験し、成績に応じて大学へ進学
職業訓練(Formación Profesional:FP)
- 実務スキルに特化した教育課程で、即戦力となる人材を育成
- 分野:調理・観光・医療補助・IT・建設・美容など多岐にわたる
- 初級(Grado Medio)と上級(Grado Superior)の2段階があり、Grado Superior修了者は大学編入も可能
- 学校だけでなく、企業でのインターンシップ(Prácticas)もカリキュラムに含まれる
バカロレアもFPも、スペインでは将来の進路に合わせて柔軟に選べる制度になっています。特にFPは、日本よりも社会的評価が高く、就職率の高さから人気が上昇しています。
学校の種類と入学手続き
スペインには、公立校・私立校に加えて、その中間に位置する「セミプライベート校(コンサートゥアード校)」という独自の学校形態があります。
入学の可否や必要な書類、手続きの時期は学校の種類によって異なるため、制度を理解しておくことが大切です。
公立校の特徴と申込方法
- 授業料は無料(教材・ランチ費用などは自己負担)
- 学区制で、住民票(Padrón)が必要
- 通常は春(3月〜5月)に申請、9月入学
私立・インターナショナルスクール
- 授業は英語中心、日本人向けの学校も一部あり
- 学費は年間5,000〜15,000ユーロ程度
- 面接や願書、レポートなどが求められる場合も
入学スケジュール
- 申込:春ごろ(自治州により異なる)
- 結果発表:初夏
- 入学開始:9月
スペインでは 新学年の開始は基本的に9月で、日本のような4月入学とは大きく異なります。
スペイン移住者の子どもの教育事情
外国人でも通える?
- 公立校も外国人児童の受け入れに積極的
- NIE番号(外国人登録番号)と住民登録があればOK
言葉の壁とサポート体制
- 初年度はスペイン語を中心とした適応クラスに入るケースが多い
- 言語サポート教員(PTALなど)の配置あり
- 親の語学力も重要(連絡帳や面談は基本スペイン語)
日本語教育の補完
- 補習校(バルセロナ・マドリードなど)あり
- オンライン日本語教室を利用する家庭も増加中
教育費と学費の目安
教育段階 | 公立校 | 私立校(一般) | インター校 |
---|---|---|---|
幼児教育 | 無料(一部費用) | 〜5,000€/年 | 〜15,000€/年 |
初等〜中等 | 教材費・給食費のみ | 3,000〜7,000€/年 | 10,000〜20,000€/年 |
バカロレア | 同上 | 同上 | 同上 |
大学 | 500〜1,500€/年(州立) | 高額な私立もあり | 英語プログラムは高め |
※州や学校によって異なります。
その他の費用
- 教材費:年間200〜500ユーロ程度
- 課外活動:月30〜100ユーロ程度
- ランチ:1食3〜5ユーロ(外注の場合)
スペインと日本の教育の違い
比較項目 | スペイン | 日本 |
---|---|---|
評価制度 | 定期試験+観察評価 | 試験中心 |
制服 | 基本なし | あり(多くの学校) |
PTA的活動 | 比較的自由 | 保護者の関与が大きい |
留年制度 | 一般的(特にESO) | ほとんどなし |
部活動 | なし(放課後教室あり) | 豊富 |
日本人家庭の子どもが通う主な学校タイプ
スペイン在住の日本人家庭では、以下のような学校が主な選択肢になります。それぞれの家庭の方針(日本式教育を継続したい/現地に適応したい/英語環境を重視したい)によって、通わせる学校が異なります。
① 日本人学校(全日制)
- 対象者:駐在員家庭など、日本の教育をそのまま継続したい家庭向け
- 場所:マドリード、バルセロナに1校ずつ
- カリキュラム:日本の文科省認定、教科書も日本と同じ
- 言語:授業は全て日本語
- メリット:帰国後の編入がスムーズ、日本式の生活指導もある
- デメリット:スペイン語や現地社会との接点が少なくなりやすい
② 公立校(Colegio Público)
- 対象者:現地社会に溶け込みたい家庭、長期移住者
- 費用:基本的に授業料無料(教材費など実費)
- 言語:授業はスペイン語(カタルーニャ語・バスク語など地域語も)
- 特徴:現地の子どもと一緒に学ぶ環境。スペイン語サポートクラスあり
- 注意点:親も学校とのやり取りは基本スペイン語。サポートが必要
③ セミプライベート校(Concertado)
- 特徴:公的補助を受けている私立校。費用は抑えめ
- 人気:地元住民にも人気で、日本人家庭にも選ばれている
- 教育レベル:学校により差があるが、比較的学力や管理がしっかりしていることが多い
④ インターナショナルスクール
- 対象者:英語中心の教育を希望する家庭、将来の海外進学を視野に入れた家庭
- 言語:英語+スペイン語
- カリキュラム:IB(国際バカロレア)、英国式、米国式など多様
- 費用:年間10,000〜20,000ユーロ程度と高額
補足:補習授業校という選択肢も
- マドリード・バルセロナ・バレンシアなどに存在
- 現地校に通いながら、週1回日本語で国語や算数を学ぶ形式
- 長期移住でも日本語力を維持したい家庭に人気
スペイン教育に関するよくある質問(FAQ)
- 日本の成績や卒業証明書は使える?
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一部の学校では提出を求められることがあります。翻訳・認証が必要な場合もあるため、事前に確認しましょう。
- 帰国後、日本の学校に編入できる?
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編入可能ですが、義務教育段階では教育委員会との調整が必要です。高校・大学受験は制度の違いに注意が必要です。
- バカロレアとインター校の違いは?
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バカロレア(Bachillerato)はスペインの国家資格。インター校はIB(国際バカロレア)や英米式のカリキュラムを提供する学校もあり、進学先の国によって選択が異なります。
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