スペインで働かずに長期滞在したい方にとって、非営利滞在ビザ(Non-Lucrative Visa:NLV)は魅力的な選択肢です。本記事では、取得条件、申請手順、家族帯同のルール、必要書類、費用までを網羅的に解説します。
「リタイアメントビザ」としても知られ、海外移住を考える日本人の間でも人気が高まっているこのビザ。
スペインの豊かな生活を楽しみたい方にとって、有力な選択肢となっています。
非営利滞在ビザとは?
スペイン非営利滞在ビザ(NLV)は、スペインで収益活動を行わずに長期滞在するためのビザです。特に、退職者や投資収入・年金などのパッシブインカムがある方に人気があります。
ポイント:
- スペイン国内での就労・ビジネス活動は不可
- 最初は1年の滞在許可 → その後2年ごとに更新可能
- 家族帯同が可能
- 5年後には永住権申請の道も
申請条件
1. 経済的な自立(収入証明)
- スペインでの生活費を十分にまかなえることを証明する必要があります。
- 基準:IPREM(月額600ユーロ)×400% = 月2,400ユーロ以上、年間28,800ユーロ以上(単身者)
- 家族帯同の場合:
- 1人目:IPREMの100%(月600ユーロ)
- 2人目以降:IPREMの25%(月150ユーロ)ずつ追加
2. 健康保険への加入
- スペイン国内で有効な民間医療保険に加入している必要があります(公的医療と同等以上のカバーが必要)。
3. 無犯罪証明(過去5年)
- 直近5年間の犯罪歴がないことを示す証明書(警察発行)
- 6ヶ月以内に発行されたもの+必要に応じてスペイン語訳+認証
4. 健康診断書
- 感染症等のリスクがないことを証明する医療証明書が必要です(国際衛生規則2005に準拠)
5. パスポート等その他
- 有効期限が滞在予定+1年以上のパスポート
- 領事館の管轄地域に居住している証明
- NIE番号(外国人識別番号)※申請前に取得が必要
家族も一緒に申請可能!
スペインの非営利滞在ビザでは、主申請者に加えて家族を帯同させることが認められています。
条件を満たせば、同時にビザを取得し、家族そろってスペインでの生活を始めることが可能です。
対象となる家族メンバー
- 配偶者または法的に認められたパートナー
- 扶養中の18歳未満の子ども、もしくは成人でも経済的に依存しており独立していない場合
- 扶養している親・祖父母(同居・依存関係の証明が必要)
追加の収入証明が必要
- 家族を帯同する場合、1人目+100%IPREM(600ユーロ)/2人目以降+25%IPREM(150ユーロ)ずつの追加収入証明が必要です。
提出すべき書類(家族分)
- 家族関係を証明する書類(結婚証明書・出生証明書など)
- 成人の子ども:扶養状況・未婚の証明
- 親・祖父母:経済的依存と同居の証明
- すべてスペイン語翻訳+アポスティーユ等の認証が必要
必要書類
スペインの非営利滞在ビザ(Non-Lucrative Visa)を申請するには、決められた書類を正確に準備・提出することが重要です。
申請者本人、家族の帯同有無などにより、必要な書類が異なります。
必要書類は3つのカテゴリに分かれる
- 一般書類(すべての申請者に共通)
- 健康・収入・居住に関する追加書類
- 帯同家族に関する書類
1. 一般書類(全申請者共通)
以下の書類は、すべての申請者が提出する必要があります。
書類名 | 内容・注意点 |
---|---|
国家ビザ申請書 | スペイン大使館・領事館の公式フォーマットを使用し、署名が必要 |
EX-01申請書 | 労働活動を行わない滞在ビザ用の書式(Non-Lucrative) |
証明写真 | 顔がはっきり写っているパスポートサイズのカラー写真(背景は明るく) |
有効なパスポート | 発行から10年以内、有効期限が滞在予定+1年以上、空白ページ2ページ以上 |
居住証明 | 領事館の管轄地域内に居住していることを示す公的書類(例:住民票) |
NIE番号(外国人識別番号) | 申請前に必ず取得。オンライン申請が可能(未取得だと申請不可) |
2. 健康・収入・居住に関する追加書類
非営利滞在ビザでは、就労せずに自立した生活を送れることが求められるため、以下の証明が必要です。
書類名 | 内容・注意点 |
---|---|
経済的資力証明 | IPREMの400%以上の資金を有することを示す銀行残高証明・年金証明・投資収入証明など |
健康保険加入証明書 | スペイン国内で有効な私的医療保険の契約書(全医療リスクをカバーしていること) |
無犯罪証明書 | 過去5年間の犯罪歴がないことを示す証明書(6ヶ月以内発行)+誓約書 |
健康診断書 | 公衆衛生上のリスクとなる疾病がないことを証明(国際基準に準拠) |
ビザ申請料および滞在許可手数料の支払い証明書 | Form 790-052の記入および支払い。オンライン支払いの場合は領収書添付 |
3. 帯同家族がいる場合の必要書類
配偶者・子ども・親を帯同する場合は、以下の書類が追加で必要になります。
帯同者の種類 | 必要書類 |
---|---|
配偶者またはパートナー | 結婚証明書または事実婚を証明する公的書類 |
子ども(18歳未満) | 出生証明書(扶養関係が明記されていること) |
成人した子ども | 経済的に扶養されていること+未婚・同居の証明書 |
親・祖父母 | 同居・扶養を示す証明書類(公的なもの) |
すべての家族書類も、スペイン語への公式翻訳+合法化(アポスティーユまたは領事認証)が必要です。
提出前にチェックすべきポイント
- 書類は6ヶ月以内に発行された最新版であること
- 全書類はスペイン語への公的翻訳+アポスティーユなどの認証済みであること
- NIE番号の取得は必須。時間がかかるため早めに申請を
- 書類が多岐にわたるため、チェックリストを作成して管理するのがおすすめです
スムーズな申請のために
スペインの非営利滞在ビザは、細かな書類要件と審査基準があります。
不備やミスを避けるためにも、専門家や移住コンサルタントのサポートを受けることで、申請成功率を高めることができます。
ビザの有効期間と更新
初回:90日間のビザ → スペイン入国後に1年間のTIE(居住許可)へ切替
- 日本などの非EU諸国から申請する場合、まずは90日間のビザが発行されます。
- このビザでスペインに入国後、1ヶ月以内にTIE(外国人居住カード)を申請し、初回1年間の滞在許可を得る形になります。
- TIE取得により、スペイン国内での正式な居住資格が認められ、銀行口座開設や契約などがスムーズになります。
更新:2年ごとの延長が可能(最大5年間)
- 初回の1年後は、2年間の延長更新が可能です。
- 更新には再度、以下の書類が求められます:
- 経済的自立の証明(再度IPREM400%以上)
- 健康保険の継続加入証明
- 滞在実績(スペインに183日以上滞在している実績)
- 2回目の更新も同様に2年間が付与され、合計5年までの滞在が可能になります。
永住権申請の道も
- 5年間の合法かつ継続的な滞在を経ることで、**スペインの永住権(Residencia de Larga Duración)**を申請できます。
- 永住権取得後は、以下のようなメリットがあります:
- 就労・起業が可能
- 滞在更新の手続きが簡略化
- 家族の同居・呼び寄せもより自由に
補足:永住権申請には、滞在中に重大な違反(労働、不正滞在、税金未納など)がないことが条件になります。
ビザ申請の流れ【3ステップ】
- 申請条件を再確認
収入要件(IPREMの400%以上)、健康保険、無犯罪証明、医療証明など、全ての条件を満たしているか確認します - 書類の準備
必要書類(原本+スペイン語訳+アポスティーユや認証済みのコピー)を揃えましょう。翻訳・公証には時間がかかるため、早めの手配が肝心です - 申請フォームの記入
・国家ビザ申請書
・EX-01フォーム(非営利滞在者用)
の2種類を正確に記入し、署名を行います - NIE番号の取得
NIE(外国人識別番号)は、ビザ申請前に取得必須です。
領事館での手続きが必要なため、早めの申請をおすすめします。
- 面接予約を取得
居住地域を管轄するスペイン領事館・大使館の予約ページから、ビザ申請の面接予約を行います。 - 書類提出と支払い(申請当日)
本人が領事館に出頭し、全ての書類を提出。申請手数料(日本国籍の場合は€80程度)を支払います。必要な場合は代理申請も可能ですが、正式な委任状や身分証明書が必要です。申請後には受付票と申請追跡コードが発行されます。
- 審査期間(最大3ヶ月)
領事館により提出書類の審査が行われます。追加資料の提出依頼や個別面談が求められることもあります。 - 結果の通知
原則3ヶ月以内に審査結果が通知されます。不許可の場合は書面で通知され、通知日から1ヶ月以内に異議申立てが可能です。 - ビザの受け取り
許可された場合、1ヶ月以内に本人または代理人が非営利滞在ビザを受け取る必要があります。受け取り方法(来館 or 郵送)は、申請時に指定できます。
補足ポイント
- ビザ取得後、スペインに90日以内に入国し、1ヶ月以内にTIE(居住カード)を申請する必要があります。
- 初回の滞在許可は「1年間」、その後は2年ごとに更新可能です。
- スペインでの収益活動は禁止されているため、リモートワーク等も対象外となる点に注意してください。
申請にかかる費用
スペインの非営利滞在ビザ(NLV)を申請する際には、主に2つの公式費用と、状況に応じた追加費用が発生します。
ビザ申請料(Visa Fee)
- 約€80
居住許可手数料(Form 790-052)
初回の一時居住許可を取得するための手数料です。
- 支払い方法:以下のいずれか
- 領事館で2部のForm 790 Code 052(2.1項にチェック)を記入・提出し支払い
- オンラインで支払い → 支払証明書を印刷して申請書類に添付
- 金額:申請年度によって異なります(例:€10〜€20程度)
その他にかかる費用(追加費用)
ビザ申請には、公式な申請料以外にも以下のような費用が発生することがあります。
項目 | 費用の目安 | 補足 |
---|---|---|
翻訳・認証費用 | €50〜€300 | すべての書類をスペイン語の公認翻訳者が翻訳し、アポスティーユまたは公証が必要 |
民間健康保険 | €400〜€1,000/年 | 年齢やカバー内容により大きく変動。全ての医療リスクをカバーする必要あり |
渡航・滞在費 | 実費 | 領事館への面接・ビザ受け取りなどで発生する交通・宿泊費など |
無犯罪証明書取得費 | €10〜€50 | 国・発行機関によって異なる |
NIE番号取得 | €9.84(公式手数料) | 書類準備や申請サポート費用が別途かかる可能性あり |
合計費用の目安(単身で申請する場合)
費目 | 目安金額 |
---|---|
ビザ申請料 | 約 €80 |
居住許可申請料 | 約 €10〜20 |
翻訳・公証 | €150〜€300 |
健康保険 | €500〜€1,000 |
その他(NIE、証明書など) | €50〜€100 |
合計 | 約 €800〜€1,500(変動あり) |
申請前に予算を確認しよう
非営利滞在ビザは、準備書類の量や翻訳・公証作業も多く、想定以上に費用がかかることもあります。
- 翻訳や認証は国・書類の種類によって価格が異なる
- 保険は年齢や健康状態、プラン内容によって大きく変動する場合あり
- 専門家に相談することで、無駄な出費や再申請のリスクを回避できます
事前にトータルコストを試算しておくことが成功のカギです。
特に家族帯同を検討している場合は、人数分だけ費用が加算されるため注意が必要です。
補足:注意点まとめ
- 年間183日以上スペインに滞在する必要あり(=実質居住)
- 現地での就労・リモートワークは原則NG(制度違反に)
- 書類不備や翻訳ミスによる却下リスクが高いため、ビザ申請サポートの利用がおすすめ
迷ったらプロに相談を
ビザ申請には複雑な書類準備・翻訳・公証作業が伴うため、不安がある方は移住コンサルタントのサポートを受けるのが安心です。 書類不備や言語の壁を乗り越え、スムーズな申請を実現できます。
依頼するメリット
- 最適なビザ選定と方向性のアドバイス
収入条件やライフスタイルに合わせて、申請可能なビザを提案。 - 書類準備の効率化
チェックリストの提供や、書類の不備・不足を事前に防止。 - 手続きの効率化
申請の流れをスムーズに進められるようにアドバイス - 成功率の向上
最新の制度や審査傾向を踏まえて、戦略的に申請をサポート。書類不備のリスクを回避
弁護士に依頼する場合(15-30万)の半額以下の費用で相談できることも多く、コスト面でもメリットがあります。
まとめ
スペインの非営利滞在ビザは、仕事をしなくても豊かな生活基盤がある方にとって、非常に現実的な移住手段です。しっかりと要件を満たし、余裕を持って準備を進めれば、長期的なスペイン生活への道が開かれます。
- 就労不可、しかし居住には最適
- 家族帯同も可能、将来的には永住も
- 書類準備・翻訳・認証のプロセスが肝
不安な方は、専門家のサポートを検討してみてください。

