イギリスの教育制度ガイド|学年構成・学校の種類・現地校とインター校の違いを徹底解説– 義務教育の年齢や学年構成、学校の種類、現地校・インター校・日本人学校の違いまで、移住者が知っておきたい教育制度を詳しく解説 –

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イギリスの中等教育(Secondary School)は、Year 7〜11で構成されており、その最終年であるYear 11(16歳)の時点で、GCSE(General Certificate of Secondary Education)と呼ばれる統一試験を受験します。

イギリスに家族で移住・駐在・留学を検討する場合、子どもの教育環境は最も気になるテーマのひとつです。本記事では、イギリスの教育制度の全体像、学校の種類、年齢別の学年構成、現地校・インターナショナルスクール・日本人学校の選び方まで、移住者目線でわかりやすく解説します。

目次

イギリスの教育制度の基本情報

イギリスの教育制度は、明確な年齢区分と段階的な学習システムが整備されており、移住や駐在で子どもを連れて行く家庭にとっては、制度の理解と学校選びが非常に重要です。以下では、義務教育の枠組みと学年構成、そして学校制度の全体像について解説します。

義務教育の年齢と段階

イギリスでは、5歳から16歳までが義務教育期間(Compulsory Education)と定められています。ただし、実際には4歳の「Reception」から就学を始めるのが一般的です。

  • 就学前教育(Early Years Foundation Stage)は3歳からスタート可能
  • 義務教育の終了は16歳(Year 11終了時)で、GCSEという全国統一試験を受験
  • 義務教育後は大学進学に向けた「Sixth Form」または「College」に進学するケースが多い

また、イギリスでは「学年」をYear(イヤー)でカウントします。例えば、日本の小学校1年生はYear 2に相当するなど、日本と1学年ずれているため、学年の読み替えには注意が必要です。

学校制度は以下の2本立て:

  • 公立校(State Schools):授業料無料。居住地によって通学区域(Catchment Area)が決まる
  • 私立校(Independent Schools):授業料有料。カリキュラムや教育方針に独自性がある

年齢別の学年構成(Early Years〜Sixth Form)

イギリスの教育制度は、年齢に応じた段階に分かれており、それぞれのステージで教育内容や学校の役割が異なります。

年齢学年教育段階説明
3〜4歳NurseryEarly Years保育園・幼稚園に相当。遊びを通じた基礎学習
4〜5歳ReceptionEarly Years小学校準備の年。初等教育の導入期
5〜11歳Year 1〜6Primary School日本の小学校に相当。読み書き、算数、理科などの基礎科目を学ぶ
11〜16歳Year 7〜11Secondary School中等教育。科目が細分化され、Year 11の終わりにGCSE(統一試験)を受験
16〜18歳Year 12〜13Sixth Form / College高等教育準備期間。A-levelまたはIBなどを履修し、大学進学を目指す

このように、イギリスでは年齢ごとに明確な教育段階が定められており、進学や編入の際には年齢だけでなく学年(Year)を基準に判断されます。特に移住・駐在を予定している家庭は、帰国時の学年への影響も考慮して、早めに進路を検討することが重要です。

イギリスの学校の種類と特徴

イギリスの教育制度には、公立校・私立校・ボーディングスクール(全寮制)といった多様な選択肢があり、家庭の教育方針や滞在形態に応じて柔軟に選ぶことが可能です。ここではそれぞれの学校タイプの特徴と、選ぶ際に知っておくべきポイントを整理します。

公立校(State Schools)

イギリスの子どもたちの約90%が通うのが公立校です。政府の資金によって運営されており、授業料は基本的に無料です。

  • 居住地によって通う学校が決まる「キャッチメント・エリア(Catchment Area)」制度が採用されており、住所登録が非常に重要
  • 教育の質には地域差があり、住宅価格と学校の成績(Ofsted評価)が連動する傾向も
  • 教育方針やカリキュラムに特徴がある「Academy(自主運営型公立校)」や、キリスト教・イスラム教などのFaith School(宗教系学校)も存在

イギリスに移住する際、どの学校に通えるかは居住地によって制限されるため、引っ越し先の学区情報を事前に確認しておくことが非常に重要です。

私立校(Independent Schools)

私立校は、国の支援を受けず、授業料を支払って通う学校です。施設・教師・教育プログラムの質が高く、大学進学率も高い傾向があります。

  • 授業料は年間£10,000〜£30,000程度が一般的(学校・学年により異なる)
  • クラス規模が小さく、一人ひとりに合わせた手厚い指導が可能
  • GCSEやA-levelに加えて、インターナショナル・バカロレア(IB)を導入している学校も多く、グローバル志向の家庭に人気
  • 英語が母語でない生徒向けに「EAL(English as an Additional Language)」サポートを行う学校も多い

入学には書類選考・試験・面接があるため、余裕を持った準備が必要です。

ボーディングスクール(全寮制)

寮生活を伴う学校で、生活面・学習面の両方において自立を促す教育を行うのが特徴です。多くのボーディングスクールは私立校として運営されています。

  • イギリス国内外からの学生が在籍し、国際色豊か
  • 教職員が常駐し、24時間体制でのサポート体制が整っている
  • 授業後や週末もクラブ活動・ボランティア・芸術・スポーツなどの課外活動が充実
  • 寮費・生活費込みで、年間費用は£30,000〜£50,000程度が目安

親が駐在で不在がちになる家庭や、帰国子女枠を視野に入れた長期戦略として、ボーディングスクールを選ぶ家庭も増えています。

イギリスではこのように多様な教育機関が存在し、それぞれにメリット・特徴があります。移住や留学にあたっては、子どもの性格・目的・言語力に応じて最適な学校を見極めることが大切です。

移住者が選べる教育オプション

イギリスへ家族で移住する際、子どもの教育環境は非常に重要なテーマのひとつです。現地の学校に通うのか、インターナショナルスクールや日本人学校を選ぶのかは、子どもの年齢、言語力、帰国予定の有無などによって大きく異なります。ここでは、移住者が選択できる主な教育オプションと、それぞれのメリット・注意点を紹介します。

現地校に通わせるメリット・注意点

イギリスの公立校・私立校を含む現地校に通うことで、子どもは現地社会に自然に溶け込み、英語力とローカル文化の適応力を早期に身につけることができます。

主なメリット:

  • 実生活で使える英語を日常的に学べる環境
  • 同年代のイギリス人との交流を通じて多様性や主体性が育ちやすい
  • 授業料が無料(公立校の場合)で、コスト面の負担が少ない

注意点:

  • 学力レベルや指導方針に学校ごとの差があるため、事前の学校見学や調査が重要
  • 英語が初級レベルの子どもにはサポート体制(EALなど)の有無を要確認
  • 教育方針や価値観が日本と異なる部分も多いため、家庭でのフォローが必要

特に義務教育のタイミング(5歳〜)での移住であれば、適応も早く、現地校を選択する家庭が多い傾向にあります。

インターナショナルスクールの特徴

英語で教育を受けながら、世界標準のカリキュラムで学べるのがインターナショナルスクール(International School)です。特に駐在員家庭や国際的なキャリアを見据えた家庭に選ばれることが多くなっています。

特徴とメリット:

  • IB(International Baccalaureate)やIGCSEなど国際的に認められたカリキュラムを採用
  • 英語教育をベースにしつつ、多言語教育やグローバルマインドの育成に注力
  • 国籍の多様な生徒が在籍し、国際的な環境に自然に馴染める

注意点:

  • 授業料は年間£15,000〜£30,000前後と高額
  • 多くの学校で入学試験や面接があり、学力や語学力を問われる
  • 日本の学年制度とは異なり、帰国後の編入時に学年のズレが生じる可能性がある

帰国子女枠を利用して日本の学校への進学を考えている家庭では、進学先の受験制度との整合性を確認しておくと安心です。

日本人学校・補習授業校

日本式教育を継続したい、または将来的に日本の学校への復帰を視野に入れている家庭にとっては、日本人学校や補習授業校が選択肢となります。

主な特徴:

  • ロンドンには日本人学校(The Japanese School in London/全日制)が存在
  • その他、マンチェスター、ミルトン・キーンズ、ケンブリッジなど複数都市に補習授業校があり、土曜日に日本語や算数などを学べる
  • 日本の教科書・カリキュラムに沿って指導されるため、帰国後の教育への接続がスムーズ

注意点:

  • 補習校は基本的に平日は現地校+土曜だけ日本語教育となるため、子どもにとっては負担になることも
  • 英語環境とのバランスが難しく、日本語と英語の習得をどちらに重点を置くか、家庭での方針が重要

特に学齢期の途中でイギリスに移住するケースや、一定期間での帰国が前提の場合には、日本人学校・補習校の利用を検討する価値があります。

移住後の教育は「どの選択が正解」というより、家族ごとの状況・方針に合った最適解を見つけることが大切です。見学や体験入学を通じて、子ども自身に合った環境をじっくり選びましょう。

入学手続きとタイミング

イギリスの学校は3学期制(Term制)で、新学年は毎年9月から始まるのが一般的です。そのため、移住や転校のタイミングはこの9月に合わせるのが理想ですが、年間を通じた途中入学(In-year admission)も可能です。

学期の区切り(Term制)

  • 秋学期(Autumn Term):9月〜12月
  • 春学期(Spring Term):1月〜3月
  • 夏学期(Summer Term):4月〜7月

公立校(State School)の入学手続き

  • 居住地の地方自治体(Local Council)を通じて申請します
  • 指定された学区(Catchment Area)によって入学先が決定
  • 申請は通常、前年の10月〜翌年1月にかけて行われる(例:2025年9月入学=2024年10月〜2025年1月申請)

私立校・インターナショナルスクールの入学手続き

  • 各校へ直接問い合わせ・申込が必要
  • 入学試験(筆記)や面接、書類選考が行われるのが一般的
  • 定員制のため、希望校がある場合は早期の出願が必須

海外からの編入(In-year admission)

  • 学年度の途中でも空きがあれば編入可能
  • 公立校はCouncilを通じて、私立・インター校は個別に調整
  • 年度途中の編入は学力や言語力の面で配慮が必要なため、学校側と事前相談するのが望ましい

教育費用の目安と生活への影響

イギリスでは、学校の種類によって費用負担が大きく異なります。以下は代表的な学校タイプごとの費用感と、生活設計への影響をまとめたものです。

学校タイプ授業料補足費用備考
公立校無料制服、給食費、教材費、学校行事費など住んでいる地域の学区制により学校が決まる。入学金不要。
私立校£10,000〜/年入学金、制服、教材、寮費、課外活動費など高額な学校は年間£30,000以上になることも。寄付金が任意で求められる場合あり。
インターナショナルスクール£15,000〜£30,000/年施設使用料、IB教材費、スクールバス、昼食費など都市部に集中。定員制・選考あり。グローバル進学を視野に入れる家庭に人気。

補足ポイント

  • 私立・インター校では複数年在籍すると総額で数百万円単位の費用が発生
  • 多くの学校で兄弟割引や奨学金制度を設けている場合もある
  • 公立校でも制服や遠足、クラブ活動で一定の出費が必要な点に留意

教育費は移住先での生活設計に大きく関わるため、事前に学校候補と費用シミュレーションを行うことが重要です。特に都市部は家賃も高いため、学区と教育費のバランスをどう取るかが移住成功の鍵となります。

イギリスの進学制度と資格(GCSE・A-level・IB)

イギリスの中等・高等教育は、資格試験を中心とした進学ステップが明確に構成されています。子どもが現地校やインターナショナルスクールで教育を受ける場合、将来の進路に関わる以下の3つの制度を理解しておくことが重要です。

16歳でGCSE(全国統一試験)を受験

  • 主な科目:英語、数学、理科、外国語、地理、歴史、ICTなど
  • 必修科目+選択科目があり、合計で8〜12科目程度を受験するのが一般的
  • 成績は9(最高)〜1(最低)で評価され、進学や就職の基礎資格となる

GCSEの成績は、その後の進路(大学進学 or 職業教育)を決定する重要な指標となります。

その後、A-levelまたはIBで大学進学準備

GCSE取得後、生徒はSixth Form(Year 12〜13)に進学し、大学進学に向けた高等教育を受けます。ここで履修するのがA-levelまたはIB(国際バカロレア)です。

A-level(Advanced Level)

  • イギリスで主流の大学進学資格
  • 3〜4科目を選択し、2年間かけて学習・試験を実施
  • 成績はA*〜Eで評価され、大学ごとに必要な科目・成績が指定される
  • 専門性が高く、将来の専攻に直結する内容が多い

IB(International Baccalaureate)

  • 国際標準の大学進学資格。幅広い科目を6教科+論文・ボランティア活動で構成
  • 総合評価は45点満点
  • 海外大学や日本の国際系学部への進学に有利な資格
  • A-levelよりも全体的な学力・バランスを求められる傾向

どちらを選ぶかは、進学希望先・学習スタイル・語学力によって決まります。

大学出願はUCAS制度を通じて行う

イギリスの大学(大学学部課程:Undergraduate)への出願は、UCAS(Universities and Colleges Admissions Service)というオンラインシステムを通じて行われます。

  • 出願時期は通常、大学入学前年の9月〜翌年1月がピーク
  • 志望動機書(Personal Statement)と推薦状が必要
  • 成績はGCSEとA-level(またはIB)の予測評価を基に判断される
  • 出願数は原則最大5校まで

オックスフォード、ケンブリッジ、医歯薬系の出願締切は早く(10月中旬)、事前準備が重要です。

まとめ|子どもの年齢・目的に合わせた柔軟な選択を

イギリスの教育制度は、公立・私立・インターナショナルスクール・日本人学校・ボーディングスクールなど、多様な選択肢が用意されており、教育の柔軟性と多様性が非常に高いのが特徴です。

その分、家庭によって最適な選択肢は異なります。

  • 英語力に自信があるか/現地での生活にすぐに適応できるか
  • 将来、日本に帰国する予定があるか/海外大学を視野に入れているか
  • 教育方針(日本式か、国際バカロレア型か)や子どもの個性

これらの要素によって、通わせるべき学校のタイプやカリキュラムが変わってきます。

特にイギリスでは、見学(Open Day)や体験授業に積極的に参加できる文化があるため、学校選びの段階で実際に現地を訪れたり、オンラインで担当者に話を聞いたりすることが重要です。

また、現地在住の日本人コミュニティや保護者ネットワークとの情報交換も非常に役立ちます。リアルな口コミや体験談から得られる情報は、公式サイトには載っていない学校の雰囲気や実情を知る手がかりになります。

イギリス移住における教育選びは、単なる学校選びではなく、子どもの人生設計に関わる重要な決断です。情報収集・見学・相談を重ねながら、子どもの年齢や個性、将来の進路に合わせた最適な環境を選び取ることが、移住成功のカギとなります。

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