イギリスへの移住を考える際には、住居探しやビザ取得、仕事の準備と並んで、「お金」に関する事前準備も非常に重要なポイントです。
現地の税制、銀行口座の開設、日本との送金方法などを正しく理解していないと、思わぬコスト負担や手続きのトラブルに直面するリスクがあります。
この記事では、イギリス移住にあたって押さえておきたい「お金」に関する基本知識をまとめています。イギリスで安心して新生活をスタートさせるための第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
イギリスの税制|居住者税・非居住者税・二重課税・確定申告の基本
イギリスの所得税は、その人が「居住者(UK resident)」か「非居住者(non-resident)」かによって課税方法が大きく異なります。
居住者とみなされる条件
以下のいずれかに該当する場合、イギリス税務上の居住者と判断されます。
- イギリス国内に主要な住居を有している
- イギリス国内で主な経済的利益(職業活動・所得の中心など)を有している
- 1年間に183日以上イギリス国内に滞在している
居住者とみなされた場合、全世界所得が課税対象となります。
つまり、日本で得た給与収入や不動産収入、副業の利益なども、イギリスで申告・納税する必要があります。
非居住者とは?
イギリスに住居も主要な経済拠点もなく、滞在日数も短期(原則183日未満)にとどまる場合、「非居住者」として扱われます。
非居住者の場合は、イギリス国内源泉の所得のみに課税されます。
たとえば、イギリス国内の不動産から得られる賃貸収入や、イギリス法人から受け取る報酬などが対象です。
なお、非居住者向けには通常、特別な源泉徴収制度(例:家賃収入に対する「Non-Resident Landlord Scheme」など)が適用される場合があります。
二重課税防止条約(日本との関係)
イギリスと日本は二重課税防止条約を締結しており、同じ所得に対して日本とイギリスの両方で課税されることを防ぐ仕組みが設けられています。
たとえば、日本で源泉徴収された給与や配当をイギリスで申告する際には、外国税額控除(Foreign Tax Credit)を利用でき、日本で支払った税額分をイギリスの納税額から差し引くことが可能です。
ただし、この控除を受けるためには、日本で納税した証明書類(源泉徴収票など)の提出が求められます。
実際の申告手続きは、イギリスの税制に詳しい専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
銀行口座の開設方法|イギリスでの手続きとおすすめ銀行
イギリスで賃貸契約を結んだり、給与を受け取ったり、日本からの送金を管理したりするためにも、現地の銀行口座はほぼ必須となります。
ただし、外国人が口座を開設する場合、通常は住所証明や滞在資格の提示が求められ、銀行によって必要書類や対応状況が異なります。
イギリスの銀行口座を開設するには
外国人がイギリスで銀行口座を開設するために、一般的に必要とされる書類は以下の通りです。
- パスポートまたは身分証明書(IDカード)
- イギリス国内の住所証明書(賃貸契約書、公共料金の請求書など)
- ビザまたは滞在許可証(必要な場合)
- 就労証明書または収入証明書(雇用契約書や給与明細など)
一部の銀行では、National Insurance Number(NIナンバー)や、税務番号(Unique Taxpayer Reference, UTR)などが後から求められることもありますが、開設時には不要な場合も多いです。
非居住者でも作れる口座はある?
イギリスに正式な住所登録がない場合、通常の個人口座(Current Account)の開設は難しい傾向にあります。
しかし、非居住者向けの「International Account」や、オンラインバンクを利用する方法もあります。
Wise(旧TransferWise)やRevolutなどを使えば、イギリス居住者向けにポンド建ての口座番号(Sort Code+Account Number)を持つことができ、日常的な送金や支払いに対応できます。
主な銀行の特徴
銀行名 | 特徴 | 外国人対応 |
---|---|---|
HSBC | 国際展開が強く、外国人向け口座も豊富 | 英語対応、International Accountあり |
Barclays | 幅広い支店網と充実したオンラインバンキング | 英語対応、ビザ要件に柔軟な場合もあり |
Lloyds Bank | 手数料無料プランがあり、日常使いに便利 | 英語対応、住所証明が必須 |
Revolut(オンライン) | 完全オンライン、ポンド口座発行可 | 英語対応、手続きスムーズ |
口座維持手数料の目安
イギリスでは、一般的な個人口座(Current Account)は基本的に維持手数料無料です。
ただし、プレミアムサービス(例:旅行保険付き、金利優遇など)を利用する場合には、月額10〜20ポンド程度の有料プランもあります。
オンラインバンクを選べば、ほぼ完全に無料で口座開設・維持が可能です。
オンラインバンクという選択肢
対面での手続きが煩雑な場合や、すぐにポンド建て口座を持ちたい場合には、オンラインバンクも人気です。
特に以下のサービスは、移住者や短期滞在者にも好評です。
- Revolut:多通貨アカウント+イギリスポンド建て口座発行可
- Wise:国際送金に強く、日本との送金もスムーズ
- Monzo、Starling Bank:イギリス国内向けの使いやすいモバイルバンク
補足:言語の壁に備えて
イギリスでは、基本的にすべての銀行で英語対応が標準です。
ただし、金融用語や契約書の内容は専門的な表現になることがあるため、事前に主要な用語や契約条件を確認しておくと安心です。
オンラインバンクを利用する場合も、重要事項説明は英語表記が基本となりますので、内容をよく理解したうえで手続きしましょう。
海外送金の方法|日本とイギリス間でのコストを抑えるには
日本の口座からイギリスへ送金する場合、またはイギリスから日本の口座に送金する場合、銀行手数料や為替レートの差によって大きなコストが発生することがあります。
近年では、従来の銀行経由よりもコストを抑えられるフィンテック系の送金サービスを利用する人が増えており、特に少額・中額送金でその効果が顕著です。
代表的なサービス
Wise(旧TransferWise)
実際の為替レートに近い透明なレートで送金でき、手数料も明確。日本からイギリスへの送金にも対応しており、少額〜中額の送金でコストパフォーマンスに優れています。

Revolut
多通貨アカウントを持つことができ、ポンドと日本円の両方で資金管理が可能。送金スピードも速く、アプリの使いやすさも特徴。イギリス国内では日常決済用としても広く利用されています。
N26
ドイツ発のオンラインバンクですが、イギリス居住者向けアカウントも開設でき、ポンド建て取引の管理に便利です。日本の銀行口座との直接接続はないため、WiseやRevolutとの併用がおすすめです。
銀行経由での送金について
イギリスの一般銀行(例:HSBC、Barclays、Lloyds Bankなど)から日本の口座へ直接送金することも可能ですが、SWIFTコードの入力や中継銀行手数料が発生するため、特に少額送金では割高になりがちです。
また、着金までに数営業日かかることが一般的で、緊急の送金には不向きな場合もあります。
まとめ|最適な手段を選ぶポイント
イギリスに長期滞在・移住を予定している方は、低コストかつスピーディな送金手段を事前に把握しておくことが重要です。
- 家賃支払い
- 現地生活費の送金
- 日本に残る家族への仕送り
- 投資資金の移動
など、送金目的に応じて、銀行経由とフィンテックサービスを柔軟に使い分けることをおすすめします。


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