海外移住における教育の完全ガイド|現地校・インター校・日本人学校の違いと選び方を解説– 現地校・インターナショナルスクール・日本人学校の特徴を比較しながら、海外移住時に最適な教育の選び方 –

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海外移住を検討する際、特にお子様のいるご家庭にとって重要なテーマとなるのが「教育環境の選択」です。本記事では、現地校・インターナショナルスクール・日本人学校の違いを中心に、海外での子どもの教育に関する基礎知識をわかりやすく解説します。

目次

なぜ教育の選択が移住の成否を左右するのか?

子どもが新しい国でスムーズに生活を始められるかどうかは、「どの教育環境を選ぶか」に大きく左右されます。学校は単なる学びの場ではなく、言語・文化・友人関係など、日常生活の基盤となる存在です。

  • 現地教育制度への適応には時間がかかる
    教科内容や評価方法、授業スタイルも日本とは大きく異なるため、子どもが慣れるまでに半年〜1年以上かかることもあります。
  • 言語や文化の違いは、メンタル面にも影響する
    授業が理解できない、友達ができにくいといった経験は、子どもの自己肯定感や精神的安定に影響を与える可能性があります。
  • 教育方針や将来の進路によって、選択すべき学校が変わる
    例えば「帰国後に日本の大学を目指す」のか、「将来も海外で進学する」のかによって、現地校/インター校/日本人学校の向き・不向きが明確に分かれます。
  • 途中での転校や制度の切り替えが難しい国もある
    特に欧州の一部では、学年途中の入学や編入を受け入れない学校も多く、最初の選択が長期的なキャリアに直結することも少なくありません。

ポイント: 教育の選択は「親の安心」と「子どもの幸せ」の両方を支える土台。学費や言語だけでなく、家庭の価値観と子どもの個性をふまえて検討することが大切です。こうした理由から、教育の選択は「生活の質」に直結する重要な要素といえるでしょう。

海外で選べる3つの教育機関とその特徴

海外で子どもをどの学校に通わせるかは、教育方針だけでなく、家庭のライフスタイルや将来設計にも大きな影響を与えます。ここでは、主に3つの選択肢について、その特徴や向いている家庭像を詳しく解説します。

① 現地校(Public / Local Schools)

最も現地社会に近い教育環境で、現地の子どもたちと同じカリキュラムを受けることになります。

  • 言語環境にどっぷり浸かることで、自然な言語習得が可能  → 幼少期から通えば、1〜2年で母語レベルに近い言語能力を身につける子も多くいます。
  • 地元の生活文化・価値観に触れる機会が豊富  → 現地社会に溶け込みやすく、ローカルコミュニティでのつながりも生まれやすい。
  • 費用面での負担が少ない  → 公立校は多くの国で無料(教科書・給食費等を除く)。私立でも€1,000〜€10,000/年程度。
  • 注意点:保護者の言語力と情報収集力が求められる  → 入学手続き、保護者会、進路相談などは現地語で行われるため、親がサポートしづらいケースも。

こんな家庭におすすめ:

  • 現地での長期滞在を予定している
  • 子どもの語学習得を重視したい
  • 教育費を抑えたい

② インターナショナルスクール(International School)

グローバルに通用する教育を受けさせたい家庭に人気の選択肢。

  • 英語または多言語による国際的な教育カリキュラム  → 国際バカロレア(IB)やケンブリッジ式、アメリカ式など、多様なプログラムが存在します。
  • 多国籍の生徒との交流が可能  → 子どもにとって、国際的な視野や多文化理解を自然に育める環境。
  • 進学先がグローバルに広がる  → 海外大学への進学実績が豊富。将来のキャリアを見据えた教育が受けられる。
  • 授業料は高額(€10,000〜€30,000/年)  → 入学金・制服・アフタースクールなどを含めると、実質負担はさらに増えることも。

こんな家庭におすすめ:

  • 海外転勤・駐在を繰り返す予定がある
  • 将来的に海外進学を視野に入れている
  • 英語教育を重視したい

③ 日本人学校・補習授業校

日本と同じカリキュラムで学べる、安心感の高い教育環境。

  • 日本の文部科学省の教育指導要領に準拠  → 教科書や授業内容も日本と同一。帰国後の受験にもスムーズに対応。
  • 日本語での学習が可能なため、学力の維持に有利  → 日本語の読み書き、計算力などの基礎学力を落とさずに保てる。
  • 補習校は現地校と並行して週末に通うスタイル  → バランスよく「日本の学力」と「現地適応」を両立できる。
  • 駐在員向けが中心で、地域が限られる  → 学校がある都市に居住する必要があり、通学時間や費用も検討ポイント。

こんな家庭におすすめ:

  • 数年後に日本への帰国を予定している
  • 日本語での教育を維持したい
  • 海外生活でも日本的な教育文化を大切にしたい

教育費の目安と国別の違い(2025年版)

海外での教育費は、学校の種類・地域・教育方針によって大きく異なります。ここでは、代表的な4種類の教育機関について、授業料の目安と特徴を比較形式でご紹介します。

教育機関授業料の目安特徴
現地校(公立)無料〜年$1,000程度多くの国で地元住民の子どもは授業料無料(教科書・給食費・制服代は別)。
授業はすべて現地語で行われ、外国籍児童向けにサポートクラス(言語支援)を設けている国もあり。
現地校(私立)$2,000〜$10,000/年宗教系やモンテッソーリ教育など独自の教育方針を持つ学校が多い。
クラス規模が小さく、個別対応に強み。入学試験や面接が必要なケースも。
インターナショナルスクール$10,000〜$30,000/年英語ベースの授業で、IB(国際バカロレア)・ケンブリッジ・APなど世界標準のカリキュラムを採用。
設備・施設が充実しており、多国籍な環境でグローバル教育を受けられるが、授業料は高額。
日本人学校$5,000〜$15,000/年文部科学省認定のカリキュラムに沿った日本語での教育が受けられる。
現地校と違い、帰国後の学力ギャップを最小限に抑えられるメリットがある。通学圏や設置都市が限られる点に注意。

子どもの年齢別に考える教育の選び方

海外移住時の教育選びは、お子さまの年齢や成長段階によって、適した環境やサポート体制が大きく異なります。ここでは、3つの年代別に教育のポイントを整理します。

【0〜6歳】幼児期:言語吸収力が高い“ゴールデンタイム”

  • 幼児は言語習得の柔軟性が高く、現地の保育園や幼稚園への通園が非常に効果的です。遊びや日常会話を通じて自然に現地語に慣れることができます。
  • 保育環境によっては、英語・現地語のバイリンガル教育が実施されている園も。
  • 一方で、日本語の基礎が形成される時期でもあるため、家庭内での日本語コミュニケーションや絵本の読み聞かせなど、日本語力の維持も並行して行うのが理想的です。
  • 保護者も現地の教育文化を理解し、言語面・生活面のサポートを意識することが大切です。

【6〜12歳】学童期:現地教育への“適応力”がカギ

  • この年代は、小学校にあたる時期であり、現地校での授業内容・教育制度に本格的に触れるフェーズに入ります。
  • 言語の壁や学習方法の違いに戸惑う子も多いため、移住初期の数ヶ月は特に丁寧なサポートが必要です。
  • 現地語の補習授業(ESLなど)や、日本語補習校を土曜日だけ併用するスタイルも効果的。
  • この時期にしっかりと現地語での学習基盤を築けるかどうかが、中学以降の教育選択の幅にも影響します。
  • また、転校のしやすさや進級制度の違いも考慮して学校選びを行うのがポイントです。

【13歳〜18歳】思春期:進路に直結する“重要フェーズ”

  • 中学・高校にあたるこの時期は、将来の大学進学・キャリア形成にも直結する大切な期間です。
  • アメリカ、イギリス、オーストラリアなどでは、高校課程から大学受験に向けたカリキュラム(IB、A-level、APなど)が導入されています。
  • 将来的に日本の大学を志望する場合は、日本人学校またはオンライン教育+帰国子女枠の活用が現実的な選択肢になります。
  • 一方、海外大学への進学を希望するなら、インターナショナルスクールや現地高校での成績と資格の取得が必須条件です。
  • また、思春期はメンタルケアが特に重要な時期。言語・文化ストレスのケア、進路の話し合い、親子間の信頼構築が求められます。

海外移住でよくある教育に関する不安とその対策

海外での子どもの教育に関しては、多くの家庭が「言語の壁」「学力の遅れ」「友人関係の不安定さ」など、さまざまな課題に直面します。ここでは、よくある不安とその解決に役立つ対策をまとめました。

不安内容よくある課題対策方法
言葉の壁子どもが現地語の授業についていけない/友達と意思疎通ができない– ESL(English as a Second Language)クラスに参加
– 家庭内での語彙トレーニングや動画視聴で補助
– 語学学習アプリ(Duolingo, LingQ など)を活用
学力の差日本の学習指導要領と異なるため、授業内容についていけない/学年の進度にギャップがある– 日本語補習校を週末に併用する(教科書準拠の学習)
– オンライン教材(すらら、スタディサプリ、Z会など)で日本の勉強を継続
– 帰国後の進学も見据えて、中学・高校では学習記録の保存も重要
友人関係の構築異文化の中でうまく馴染めず孤立する/いじめや偏見に直面することも– 親子で現地の文化・宗教・価値観を一緒に学ぶ
– 放課後のクラブ活動や地域イベントへの参加で友達づくりをサポート
– 保護者も学校や地域コミュニティに積極的に関わる姿勢が重要

保護者ができるメンタルサポートも重要

  • 子どもの「今日どうだった?」を毎日聞くようにする
  • 日本語と現地語の“バイリンガルの悩み”を受け止める
  • 無理に“現地に馴染ませよう”とせず、家庭が安心できる拠点になるよう心がける

海外での教育は「慣れるまでの時間」と「親のサポート」が成功の鍵です。焦らず、子どものペースを尊重する姿勢を大切にしましょう。

【ステップガイド】教育面の準備はこう進める

海外での子どもの教育は「早めの準備」と「現地制度の理解」がカギ。以下のステップで、スムーズな教育移行を目指しましょう。

STEP
移住予定国の教育制度をリサーチ
  • 義務教育の開始年齢・修了年齢
  • 学年の区切り(9月始まりか、1月始まりか)
  • 外国籍児童の受け入れ方針や必要書類
  • ビザによって就学に制限がある場合もあるため注意

例:ドイツでは6歳から義務教育、アメリカは州によって差あり

STEP
家族の教育方針を整理
  • 英語・現地語の習得を優先するか、日本語教育を継続するか
  • 将来的な進路(日本の高校・大学/現地校から海外進学など)
  • お子さまの性格や適応力も考慮して、方針を共有しておく

ここがぶれると、学校選びが迷走しやすいので要注意

STEP
候補となる学校をリストアップ
  • 公立・私立の現地校、インターナショナルスクール、日本人学校など
  • 授業言語/学費/通学距離/学習支援の有無などで比較検討
  • SNSや在住者ブログでリアルな口コミもチェック

インター校でもカリキュラムが「英式・米式・IB」と異なるので要確認

STEP
学校見学・問い合わせ
  • 現地訪問が難しい場合は、オンラインでの説明会・バーチャルツアーも活用
  • メールのやり取りでは、英語 or 現地語でのやりとりに慣れておく
  • 質問内容は事前にまとめておくと印象アップ

子ども本人の意見も取り入れておくと安心

STEP
出願・入学手続きの準備
  • 必要書類:成績証明書、出生証明書、ワクチン接種証明など
  • 書類の翻訳が必要な場合も(公的機関発行の翻訳者による翻訳など)
  • 出願時期が日本と異なるため、逆算してスケジュールを組む

公立校でも事前の登録・面談が必要なケースあり

STEP
移住後のサポート体制を整備
  • 日本語補習校の登録、語学塾、家庭教師などの併用も検討
  • 親も「学校の連絡手段」や「現地保護者ネットワーク」に早めに慣れておく
  • 習い事やクラブ活動を通じた友達づくりの支援も有効

親の伴走と環境づくりが、子どもの安心感につながります

まとめ|海外での教育は「家族の価値観」と「子どもの個性」で選ぶ

海外での教育選びには、唯一の「正解」や絶対的なベストな選択肢は存在しません。どの教育機関を選ぶかは、あくまで家族の価値観や教育方針、そしてお子さまの性格や将来の目標に合わせて柔軟に判断することが何より重要です。

  • 「現地社会に溶け込ませたい」という方は現地校へ
  • 「英語力+国際的な教育環境」を求めるならインター校
  • 「日本語や学力をしっかりキープしたい」なら日本人学校や補習校

など、方針に応じて道は異なります。

また、多くの家庭が最初から最後まで同じ学校を選び続けているわけではなく、

  • インター校 → 現地校へ転校
  • 現地校+補習校の併用
  • 年齢が上がるごとに進学に有利な学校に移行

など、お子さまの成長や環境の変化に応じて柔軟に選択肢を切り替えているケースも多く見られます。

移住直後は「言葉の壁」「新しい環境への不安」など、戸惑いやストレスを抱えるお子さまも少なくありません。最初の1〜2年は「完璧な学力よりも心の安定」を重視し、プレッシャーを与えすぎない環境づくりと親のサポート体制が鍵となります。

国別の教育ガイドの基本ガイド

教育、義務教育、現地校・インター校・日本人学校の違いと選び方は、国によって異なります。詳しくは以下の国別ガイドをご参照ください。

ヨーロッパ

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