海外移住と仕事の関係|収入源をどう確保するかがカギ
海外移住を実現するうえで避けて通れないのが「どうやって収入を得るか?」という課題です。
現地就職、リモートワーク、自営業、アルバイトなど、働き方の選択肢は国やビザによって大きく異なります。
「どこで、どんな形で働くか」を明確にしておくことは、ビザ取得の計画にも直結します。ここでは、移住後の収入確保に向けた基本知識を体系的に解説します。
働き方の種類|海外移住で選べる5つの働き方
海外移住において「どのように働くか」は、生活スタイルやビザ選びを左右する重要なテーマです。
現地で就職するのか、日本の仕事を続けるのか、それとも自分で事業を立ち上げるのか。
国やビザによって許可される働き方は異なるため、自分に合った選択肢を知っておくことが成功への第一歩となります。
以下では、移住後に選ばれる代表的な5つの働き方を比較し、それぞれの特徴とメリットを整理します。
1. 現地就職(ローカル企業での雇用)
- ビザの種類:就労ビザ、EUブルーカードなど
- 概要:移住先の企業に就職し、現地従業員として働く形態。語学スキルや専門的な職務経験が求められることが多い。
- 特徴
- 求人探し・面接など現地就活が必要
- 雇用主がビザのスポンサーになるケースが一般的
- メリット
- 現地社会に早く溶け込める
- 医療・年金などの社会保障制度に自動加入
- 安定した給与収入が得られる
補足:EUブルーカードは高スキル人材向けの特別制度で、給与基準などの条件があるが、永住権取得の近道にもなる。
2. リモートワーク(日本企業・クライアント向け)
- ビザの種類:デジタルノマドビザ、自営業ビザなど
- 概要:物理的には海外に住みながら、仕事の契約先は日本(または第三国)のまま継続するスタイル。
- 特徴
- 業務の継続性があるため、収入の断絶が起きにくい
- ノマドビザ取得の条件として「既存の収入源」が求められる国が多い
- メリット
- 渡航前に収入を確保できれば、現地での職探し不要
- 地理的制約を受けないため、どの国にも柔軟に移動可能
コメント:特にエンジニア・Web制作・ライター・マーケターなどはこのスタイルと相性が良く、ノマドビザ取得の王道でもあります。
3. フリーランス・自営業
- ビザの種類:自営業ビザ(スペイン、フランスなど)、個人事業主登録
- 概要:自分自身が事業者となり、現地またはオンラインでクライアントを開拓して収入を得る。
- 特徴
- 開業計画や売上予測などのビジネスプランが求められる
- ビザ申請時に「収入の実現可能性」を審査されることが多い
- メリット
- 自由度が高く、自分のスキル・強みを活かせる
- 現地顧客との信頼関係ができれば長期的な生活基盤になる
- 起業家支援制度を活用できる国もある(例:スタートアップビザ)
ヒント:スペイン・フランスなどでは「Autónomo(個人事業主)」として登録することで合法的にビジネスが可能になります。
4. ワーキングホリデーや学生ビザ中の就労
- ビザの種類:ワーキングホリデービザ、学生ビザ(就労制限あり)
- 概要:本来の目的(休暇や学業)の合間にアルバイト的に働くことが許可される形態。
- 特徴
- 就労時間に上限あり(例:学生ビザでは週20時間までなど)
- 飲食店・観光業・日本食レストランなどでの求人が多い
- メリット
- 若年層(18〜30歳)が対象のため、初めての海外経験として最適
- 語学力が未熟でも採用されやすい業種がある
- 実績を積めば、将来的に長期ビザへの切り替えも検討可能
注意点:ワーホリは対象年齢・国の制限があるため早めに確認を。学生ビザは就労に関する条件が国によって大きく異なる。
5. デジタルノマドとしての生活
- ビザの種類:デジタルノマドビザ/または観光ビザ+短期滞在を繰り返す形式
- 概要:居住国にとらわれず、複数の国を移動しながらオンラインで収入を得るスタイル。
- 特徴
- 「定住」を前提としないライフスタイル
- 税務上の居住者とならないよう注意が必要
- メリット
- ビザ条件の緩い国を選べば、比較的自由に滞在が可能
- IT系・クリエイティブ業との相性が抜群
- 海外のノマドコミュニティ(例:バリ島、ポルト、バンコクなど)を活用できる
補足:現在は約30カ国以上でノマドビザ制度が整備されつつあり、安定収入とネット環境があれば合法的に長期滞在が可能です。
就労に必要なビザとその条件
海外で働くには、まず「就労が可能なビザ」を持っていることが絶対条件です。
国や働き方によって取得できるビザは異なります。
ビザの種類 | 就労可否 | 主な対象 | 代表的な国 |
---|---|---|---|
就労ビザ(雇用主スポンサー) | ○ | 現地企業に雇用される人 | ドイツ、カナダ、シンガポール |
自営業ビザ | ○ | 現地でフリーランス活動 | スペイン、フランス |
デジタルノマドビザ | ○ | オンライン収入がある人 | エストニア、スペイン、ポルトガル |
学生ビザ | △(制限あり) | 留学生 | イギリス、スペイン |
観光ビザ | ✕ | 短期滞在者 | 全世界共通 |
詳しくはこちらのガイドをご確認ください。
仕事の探し方|移住前・移住後にできること
海外移住後の生活を安定させるには、「どうやって仕事を見つけるか」が大きなカギとなります。
特に移住初期は、言語の壁や情報不足によって苦労するケースも少なくありません。
そこで、このセクションでは移住前に準備できること・移住後に活用できる手段の両面から、代表的な仕事探しの方法を整理します。
自分の語学力やビザの条件に合わせて、最適なアプローチを選びましょう。
1. オンライン求人サイトを活用する
- 代表的なサイト:
- 特徴
- 業種・勤務地・契約形態(正社員・インターンなど)で詳細検索可能
- 英語圏であれば、英語のみで応募可能なポジションも多数
- 多くの求人サイトで「履歴書の登録」や「求人の通知設定」ができ、情報収集を効率化できる
- 活用のコツ
- プロフィールは英語または現地語で充実させる
- 「ビザスポンサーあり」でフィルター検索する
- エントリーは早めに。人気求人は応募が集中しやすい
2. 転職エージェントを活用する
- 代表的なエージェント
- Daijob:日本人向けのバイリンガル転職に特化
- RGF:日系・外資系の求人に強い
- Michael Page:グローバル対応の大手転職エージェント
- 特徴
- 履歴書や職務経歴書の添削、面接対策までトータルサポート
- 非公開求人(一般には出回らない高条件求人)に出会える可能性
- 就労ビザ取得の支援がある企業を紹介してもらえることも
- 活用のコツ
- 希望条件(国、職種、年収、ビザ希望など)を具体的に伝える
- エージェントの担当者と定期的に連絡を取り、最新案件をキャッチ
- 複数のエージェントに登録して、選択肢を広げておく
3. 現地ネットワークや紹介を活用する
- 情報が得られる場所
- Facebookグループ(例:「スペイン在住日本人の会」「海外就職サロン」など)
- Meetupイベント(語学交流・IT系イベントなど)
- 語学学校やカフェの掲示板
- 在住日本人によるブログやnote発信
- 特徴
- 求人サイトに載っていない“非公式求人”が手に入る
- 特に飲食・観光業・小規模ビジネスでは、紹介や口コミ採用が多い
- 就職後のミスマッチが起きにくい(事前に内部情報を得やすいため)
- 活用のコツ
- 移住前からSNSやグループに参加し、存在をアピールしておく
- 自己紹介やスキル紹介を丁寧に投稿すると信頼されやすい
- 相手にメリットを提示する姿勢が紹介につながる(例:「デザインできます」「和食経験あり」など)
補足:求人情報だけでなく、ビザや生活情報も併せて得られるため、ネットワークづくりは早ければ早いほど有利です。
海外で働く際の注意点|就労前に知っておくべき4つのポイント
海外で働くことを考える際、日本と現地の雇用制度や生活条件の違いを理解しておくことは非常に重要です。特に初めての海外就労では、言語・契約・社会保障など、思わぬギャップに直面するケースも少なくありません。以下の4つの視点を事前に押さえておくことで、スムーズなスタートが切れるはずです。
1. 契約形態の違いを理解する(Permanent vs Fixed-term)
海外の雇用契約には、主に以下の2種類があります。
- Permanent contract(無期雇用):いわゆる正社員。契約期間の定めがなく、労働者保護も手厚い
- Fixed-term contract(有期雇用):期間限定の雇用。6ヶ月〜1年など短期契約の更新が前提となることも
欧州を中心に、労働契約の内容は法律で厳密に規定されており、解雇ルールや退職金制度も明文化されています。企業によっては、まずは試用期間付きの有期契約 → 実績に応じて無期契約へ切り替えという流れが一般的です。
Tips:契約書の締結前に、契約期間・仕事内容・給与・社会保障(Social Security)の有無を必ず確認しましょう。
2. 最低賃金と生活費のバランスをチェック
- 最低賃金は国によって大きく異なります(例:スペイン€1,134/月、フランス€1,766/月)
- ただし都市部では家賃・物価が高く、最低賃金では生活が難しいケースも。共働きやルームシェアが前提のこともあります
実際の生活可能ラインを知るには、“net income”(手取り額)ベースでの生活費試算が有効です。
Point:「Gross(額面給与)」と「Net(手取り)」の差を確認し、社会保険料や税引後の実収入を把握しましょう。
3. 語学力と職種の相性を見極める
- “英語圏”だからといって、すべての職場で英語だけが通じるとは限りません。接客業・行政・医療などでは、現地語が必須なケースもあります
- 一方で、IT・Web・デザインなどの職種は、英語ベースで働ける国際的な企業が多いため、英語だけでも通用するチャンスがあります
現地の語学が必須かどうかは、業界とポジションによって異なるため、求人要件をよく確認しましょう。
準備のコツ:挨拶や面接対応、電話応対などの最低限の現地語コミュニケーション力は、移住前から身につけておくと安心です。
4. 社会保障と医療制度への理解
- 正社員として現地企業に雇用される場合、多くの国では自動的に社会保障(年金・健康保険・失業保険など)へ加入する仕組みになっています
- フリーランス・自営業者の場合は、自ら社会保障制度へ登録し、保険料を支払う必要があるケースが一般的です(例:スペインのAutónomo制度など)
ヨーロッパ諸国では、公的医療制度が非常に充実しており、登録後は医療費が無料 or 低額となる国も。ただし、加入までに時間がかかる国もあるため、移住初期は民間医療保険の加入も検討しましょう。
ビザの観点でも重要:一部の国では、ビザ申請時に「健康保険の加入証明」が必須条件となっています。
就労と税金・保険の関係|移住後の義務と連携に注意
海外で就労すると、「どこの国に税金を納めるのか」「年金や健康保険はどうなるのか」という新たな問題が出てきます。国際的なルールや日本との協定により、多くのケースでは二重払い・無保険の状態を防ぐ仕組みが用意されていますが、内容を理解しておかないと不利益を被ることもあります。
税金のポイント:居住者になると全世界所得が課税対象に
- 多くの国では「税務上の居住者(Tax Resident)」に該当すると、その年の全世界所得(Worldwide Income)を申告・課税される仕組みです。
- 日本の収入(給与・配当・副業など)も対象になるため、申告を怠ると脱税と見なされるリスクも。
- 滞在日数(例:183日ルール)や生活の実態により、税務上の居住地が判定されます。
補足:スペイン・ドイツ・フランスなどでは「滞在183日以上」で居住者扱いになるのが一般的です。
二重課税防止条約(DTA)により税の相殺が可能
- 日本と滞在国の間で「二重課税防止条約(DTA)」が締結されている場合、同じ所得に対して二重に課税されることを防ぐ制度が用意されています。
- 例えば、日本で源泉徴収された給与や配当について、滞在国での確定申告時に「外国税額控除(Foreign Tax Credit)」として差し引くことが可能です。
ポイント:税額控除を受けるには、日本での納税証明書や源泉徴収票などを提出する必要があります。
社会保障協定の有無にも注意
- 国によっては、日本と「社会保障協定(Social Security Agreement)」を締結しており、年金の通算加入や二重加入の回避が可能です。
- これにより、例えば日本で10年、ドイツで5年働いた場合、合計15年分の年金加入期間として扱われるといった制度が適用されるケースもあります。
- 一方で、協定が結ばれていない国では、日本と現地の両方に保険料を支払う必要がある場合もあるため要注意です。
参考:日本は現在、アメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・スペインなど主要国と協定を締結済みです(厚生労働省の公式情報を参照)。
税金・社会保障に関しては国ごとに大きく制度が異なり、「知らなかった」では済まない問題が多い分野です。長期滞在や永住を視野に入れる場合は、現地の税理士や専門コンサルへの相談も視野に入れておくと安心です。
成功するための仕事探しTips|海外就職を実現するための戦略的アプローチ
海外での就職活動では、語学力や職歴に不安がある方でも、戦略と準備次第でチャンスをつかむことが可能です。ここでは、日本にいる間から実践できる就活のコツと、採用担当者に響くアプローチ法を紹介します。
1. 日本にいるうちに「オンライン面接」で内定を狙う
- 多くの企業では、海外人材を対象にZoomやGoogle Meetを使ったリモート面接を実施しています。
- 特にノマドビザやワーキングホリデーのように渡航前に雇用証明が必要なケースでは、事前内定が大きな武器になります。
- LinkedInや求人サイト経由で「リモートOK」「ビザサポートあり」の企業を検索し、積極的にエントリーしましょう。
ポイント:「英語での面接練習」を日本にいる間に繰り返しておくと、いざというときに焦らず対応できます。
2. 自己PRは「英語」+「現地語」で2種類準備
- 欧州・南米などの非英語圏では、「英語+現地語(例:スペイン語)」でのやり取りが求められる場合もあります。
- 自己紹介文・職務経歴・志望動機を、英語と現地語の2パターンで事前に準備しておくと安心です。
- 英語力が強みであれば、最初に「私は英語を使って仕事ができます(例:I am comfortable working in an English-speaking environment)」と伝えると好印象です。
ヒント:ChatGPTを使って英文添削を行い、自然で伝わりやすい英語表現にブラッシュアップするのも有効。
3. 履歴書(CV)は「海外フォーマット」で用意
- 海外では、日本のような「職務経歴書」形式は一般的ではなく、1〜2ページの簡潔なCV(Curriculum Vitae)が主流です。
- 欧州で使える「Europassフォーマット」や、英語圏向けのGoogle Docsテンプレートを活用するとスムーズです。
- 顔写真の有無や誕生日の記載など、国によって推奨フォーマットが異なるため、対象国に応じてカスタマイズしましょう。
チェックリスト:
- 英語表記
- 簡潔な自己紹介(Profile)
- 学歴・職歴・スキル・資格
- 言語スキル(CEFRレベルなど)
4. 「日本人らしさ」が活かせる業種を狙う
- 海外では「日本人であること」が武器になる業種・職種も多く存在します。たとえば:
- 観光・ホスピタリティ業界(日本人観光客対応)
- 和食レストラン・フードビジネス
- 日本語教育・バイリンガル保育園
- 日系企業の現地拠点(営業・事務など)
- 日本語ネイティブというだけで需要がある求人もあり、語学力に自信がない方でも採用されやすい分野です。
補足:スペイン、フランス、タイなど観光地では「日本人対応スタッフ」が定期的に募集されていることも。
番外編:ポートフォリオ・SNSも武器になる
- デザイナー・エンジニア・ライターなどの職種では、履歴書よりポートフォリオの方が重要視されることもあります。
- GitHub、Notion、Behanceなどに成果物をまとめておくと、応募時にそのままURLを送れます。
- LinkedInのプロフィールを英語で整えることも、ヘッドハンティングや企業からのスカウトに繋がります。
よくある質問(FAQ)
まとめ|海外移住後の仕事選びは「情報と準備」がカギ
海外で働くことは、多くの人にとって人生を変える大きなチャンスです。しかし、その一歩を確実に踏み出すためには、「情報収集」と「計画的な準備」が欠かせません。
✔ ビザと働き方の組み合わせがすべての出発点
- 自分に合ったビザ(就労ビザ・ノマドビザ・自営業ビザなど)を選ぶことで、実現可能な働き方が見えてきます。
- 「やりたい仕事」よりも「できる仕事」から始めるという視点も重要です。
✔ 国ごとに事情が大きく異なる
- 最低賃金、雇用制度、語学要件、求人市場の特性などは、国によって大きな差があります。
- 「英語が通じる=英語だけで働ける」とは限らないため、現地語の習得も視野に入れましょう。
✔ 日本にいるうちから準備を進めておく
- 履歴書の整備、求人サイトへの登録、自己PRの準備、面接練習など、できることはたくさんあります。
- 「移住してから考える」ではなく、「移住前に内定を目指す」ことが成功への近道です。
✔ 情報の整理と行動が、結果を変える
- 求人サイト・転職エージェント・現地コミュニティを活用し、複数のルートからチャンスを探す
- 税制・社会保障・保険などの制度理解も、長期滞在の安心に直結します
海外でのキャリアは、準備を重ねた人にこそ大きく開かれる道です。
「どの国で、どんなビザで、どんな形で働くか」──その選択の幅を広げるために、今できる準備を一歩ずつ始めていきましょう。
国別の仕事について
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